“電子舌”で飲料識別・分析 産総研発新興のExtenD、高感度化追求し用途開拓

(2024/8/5 12:00)

  • AIソムリエは少量のサンプルで液体の特徴を解析できる

ExtenD(エクステンド、佐賀県鳥栖市、北市充社長)は、飲料の官能検査など向け分析システム「AIソムリエ」を開発した。センサー部分には、電気化学的測定で機能を発揮するダイヤモンド素材を使った「電子舌」を採用した。液体の特徴を抽出し、データ分析やビッグデータ(大量データ)との比較に人工知能(AI)を利用する。飲料メーカーでの利用実績もあり、今後は医療機関での検査など多分野での利用も視野に入れる。

AIソムリエの電子舌は一つのセンサーを使用し、検査時間は1分程度。1回ごとにセンサーを取り替えることで精度を維持する。1回の分析で比較に十分なデータを抽出でき、検査時間の短縮を実現した。従来のセンサーは液体の特徴を抽出する量が小さく、複数回にわたる検査が必要だった。

電子舌は液体からの電気信号を指紋情報のように捉え、個体データを識別する。AIソムリエは個体データや、人間のソムリエが実施する官能検査の結果などをビッグデータとして蓄積することで、液体ごとの識別や分析の材料とする。

ExtenDはこれまでに国内の飲料メーカーなどからの受託をはじめ500件を超える検査を実施してきた。メーカーの新製品開発や、飲食店で飲料と料理が合うかどうかのペアリング提案に活用するケースもある。

今後の課題となっているのが電子舌の高感度化だ。AIが適切な解析をするためにどの程度のデータが必要なのかを見極めながら、機械学習モデルの改良と並行して高感度化に向けた取り組みを続ける。

北市社長はAIソムリエ事業について「今後5年間で20億円規模の事業に成長させたい」と目標を示す。解析技術などの自社固有の知的財産を守るため、特許の取得にも動き始めている。

事業拡大を見据えて、開発に携わる人材も新たに雇用する考え。また、スマートフォン向けのアプリケーションの開発も進める。持ち運び可能なシステムの確立で用途拡大を試みる。

同社は産業技術総合研究所(産総研)発のスタートアップとして2022年に創業。社名には「ダイヤモンド(Diamond)の可能性を広げる(extend)」という狙いを込めた。24年には産総研九州センター(佐賀県鳥栖市)に実証ラボを開設し、研究開発力強化につなげる。

(2024/8/5 12:00)

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