社説/官と民の関わり方(4)宇宙開発は民間の力で存在感を

(2024/8/21 05:00)

2023年11月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)法が改正され、宇宙戦略基金が設けられた。民間企業や大学などに10年で1兆円規模の支援を行い、宇宙ビジネスの成長を促す。政府は30年代の早い時期に、国内宇宙関連市場を8兆円に倍増させる目標を掲げる。ビジネス化に向けた課題は不足するプレーヤーの確保で、民間活力をさらに引き出すことが求められる。

国際的に宇宙開発競争が激化し、40年に世界の宇宙ビジネスは150兆円に達するとの予測もある。宇宙開発は安全保障や防災・減災にも資する。米国では米航空宇宙局(NASA)がスタートアップを支援し、「スペースX」などが成長した実績がある。日本も宇宙開発で存在感を発揮するため、宇宙基本計画に基づいて研究開発から実証、社会実装までを戦略的に推進することが求められる。

JAXAに造成された基金は複数年にわたって使えるため、民間企業や大学は長期的な研究計画を立てやすい。基金の対象は輸送や衛星、探査など3分野で、30年代前半までのビジネス創出を掲げる。国の基幹ロケットと国内民間ロケットの打ち上げ能力を年30回程度、火星圏以遠のミッションへの参画で10件以上を目指すという。

ハードルは低くない。スタートアップによる新規参入などの拡大が課題になる。これまで宇宙関連スタートアップ4社が上場を果たしたが、これらに続く企業が相次ぐ必要がある。基金対象となった企業の研究の進展も中長期でチェックする必要があり、JAXAの責任は重い。

JAXA自体も、打ち上げ事業で産業として自立する必要がある。7月に新型主力ロケット「H3」の打ち上げに成功したが、本格デビューに過ぎない。当面は年6回程度安定して打ち上げ、民間の商業衛星を積極受注できる実績を積み上げたい。1月には無人探査機「SLIM」が誤差100メートル以内のピンポイント着陸を世界で初めて成功した。技術的なアドバンテージにも磨きをかけつつ、民間企業とともに宇宙開発の歩みを進めてほしい。(この項おわり)

(2024/8/21 05:00)

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