社説/中小の人手不足 賃上げも求人難、生産性向上を

(2024/9/16 05:00)

中小企業の人手不足が深刻化している。大企業より不足感が強く、業績が厳しい中でも人材確保に向けた「防衛的賃上げ」に動いている。ただ、2024年の人手不足関連倒産は過去最多となる見通しで、賃上げに動いても人手を確保できていない状況が懸念される。中小企業はこれから本格化する「金利のある世界」も見据え、これまで以上に生産性の向上を急ぎたい。

内閣府と財務省がまとめた7―9月期の法人企業景気予測調査では、人手不足を示す指数が中小企業は31・9%と大企業の27を上回る。中小企業は深刻化する人手不足に対応するため賃上げを推進しているものの、大企業の賃上げ率や賃金水準に及ばず、厳しい人材争奪を余儀なくされているのが実情である。

連合がまとめた24年春季労使交渉(春闘)の最終集計では、組合員300人以上の平均賃上げ率5・19%に対し、300人未満は4・45%にとどまった。

人材を確保できず、倒産に追い込まれた中小企業も増加傾向にある。東京商工リサーチによると1―8月累計の同倒産件数は前年同期比1・9倍の194件に達し、年間で過去最多だった23年の158件をすでに上回った。求人難、人件費高騰、従業員退職などが倒産の引き金となっていることに留意したい。

7―9月期の法人企業景気予測調査では、人材確保の取り組みについて中小企業の72・8%が「初任給を含む賃金の引き上げ」と回答していた。省力化・省人化投資などよりも、賃上げが優先されていた。厚生労働省「24年版労働経済白書」でも日本は米国に比べて人材不足に対する賃上げ感応度が高いという。中小企業は人材不足を補う生産性の向上にも目配りしてほしい。政府の補助金も活用しつつ収益基盤の強化を急ぎたい。

「労働経済白書」では、コロナ禍前より人材不足感は強く、高齢化によりさらに深刻化していくと警鐘を鳴らす。より高い収入を求め、中小企業から大企業への労働移転も進む。中小企業は、女性や高齢者などの多様な人材の活躍やデジタル化も進め、白書の警鐘に反応したい。

(2024/9/16 05:00)

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