(2024/9/19 17:00)
米連邦公開市場委員会(FOMC)が0・5%の利下げを決めた。日米金利差縮小に伴う円高や株安が懸念されていたものの、19日は円安・株高傾向で推移した。従来、産業界では「安定的な為替相場が一番大事だ」(日立製作所の加藤知巳最高財務責任者〈CFO〉)との声が多く、円安を手放しで礼賛する向きは少ない。各社は国内外の政府や中央銀行の動きを注視しつつ、環境変化への対応策を模索する。
「最も困るのが為替の急激な変化。対応が追いつかない」―。日本自動車工業会(自工会)の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は、こう懸念を示す。日系自動車各社にとって米国市場は主力市場であり、電動化など今後の投資戦略に大幅な変更はないものの、為替の急激な変動は成長戦略を描く上で影響を与えかねない。
円高が進行すれば短期的には業績の下押し圧力となる。日系完成車メーカー7社の2025年3月期の想定為替レートは、1ドル=140―155円。24年4―6月期業績でも円安進行による為替差益が各社の利益を押し上げ、インフレ影響や原材料費・人件費などのコスト増加分を相殺してきた。こうしたプラス効果が円高で剥落する恐れがある。また為替変動で株価が下落すれば消費マインドを冷やし、新車販売にも足かせとなりそうだ。
化学業界も米国の利下げによる為替への影響を注視していたが、まずは市場として大きい米国経済の下支えとなることを期待する声が挙がった。石油化学工業協会(石化協)の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は「為替は大きく変わっていない。日本にとっては米国経済が落ち込むのを止めてもらう感覚もあるのではないか」と指摘。高橋秀仁副会長(レゾナック・ホールディングス社長)も「米国の景気が落ち込むことが怖かったので、それが防げる期待感の方が大きい」と述べた。
一方で、利下げにより中長期的には円高に振れるという見方もある。旭化成は?年3月期の想定為替レートを1ドル=145円としており、想定より円高に振れることによる業績への影響が懸念の一つだ。ただ過度な円安はさまざまなコスト高につながる。「大きな変化が短期的に起こるのは望ましいことではない」(工藤氏)。
電機業界では総合電機各社の想定為替レートが1ドル=140―150円台で、直近の為替動向はこの範囲内に収まる。ただ今後、日米の金利差が縮小すれば円高方向に進むと見込まれ、各社の収益にマイナス要因となる恐れがある。米国経済の動向も投資判断に影響を与えそうだ。
日立製作所は想定為替レートを1ドル=140円に設定。1円の円安で調整後EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)は10億円の上乗せ効果がある。ただ、円安は「営業利益率が下がったり海外M&A(合併・買収)が高くなったりする影響もある。いいところばかりではない」(加藤CFO)。
ソニーグループの十時裕樹社長は8月の会見で、「我々の事業で一番気にしないといけないのは、米国の消費動向。やや景気減速のシグナルが出ており、注意深く見守る」と述べていた。11月の米大統領選挙など不確定要素も多く、各社は世界経済の情勢から目が離せない日々が続く。
(2024/9/19 17:00)
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