産業春秋／日鉄の米社買収に期待

日本製鉄によるＵＳスチールの買収計画について、米政府が再申請を承認したと複数の米メディアが報じた。２３日が期限だった審査期間が、再申請により９０日間延期される。買収計画が承認されるかは米大統領選後に先送りされ、買収阻止が当面回避される。

買収に反対する有力な労働組合票をめぐり、米大統領選のハリス、トランプ両候補は買収反対を表明。買収計画を審査している対米外国投資委員会（ＣＦＩＵＳ）がバイデン大統領に勧告すれば、買収阻止となりかねなかった。

買収計画は日鉄、ＵＳスチール双方に利点があり、米国の国益にも資する。米国の鉄鋼生産が減少するという安全保障上の懸念は存在せず、むしろ買収阻止はＵＳスチールに製鉄所閉鎖などの合理化を迫る。

日鉄は２０１９年に欧州アルセロール・ミタルと共同でインドの鉄鋼大手を買収、２２年にはタイの電炉大手も買収するなどグローバル戦略を推進中だ。成長著しいインドや東南アジアに続く三つ目の重要拠点に米国を位置付ける。

ＵＳスチールは最先端の電炉技術を持つ。日鉄の技術力との融合で脱炭素を加速し、世界の鉄鋼業をリードしてほしい。日鉄の所期の目的が実現すると期待したい。