群馬大、森林の仕組み把握しCO2削減へ

(2024/9/20 12:40)

  • 北海道の大雪山、亜寒帯常緑針葉樹林で飛行ロボット(ドローン)を活用した画像(群馬大提供)

森林整備の財源として2024年度から森林環境税の徴収が始まった。国が二酸化炭素(CO2)排出削減量や吸収量を認証する制度「J―クレジット」の動きもある。群馬大学情報学部の西村尚之教授は「森林を健全な形にするには、本来の姿やメカニズムを把握することが重要だ」と強調する。森林の研究は一般社会との関わりと、数百年単位で考えるべき長期視点と、両方からアプローチする奥深さを備えている。

森林はゆっくりと不安定な形で変化しているが、その不安定さの中に森を維持する仕組みが隠されている。環境省が全国1000カ所で多様な生態系を長期継続調査する「モニタリングサイト1000」は、2000年代にスタートして森林・草原の対象場所も決まっている。森林動態を研究する西村教授はそれ以前も含め、「北海道から九州まで10カ所以上で研究を続けてきた」と胸を張る。

  • 350年生の木曽ヒノキの天然生林での調査(群馬大提供)

具体的には森林内にプロ野球のグラウンドほどの約1ヘクタールの調査枠を設定し、ある基準以上の大きさの樹木すべてに識別標識を付け、種名の他に樹高や、胸の高さ付近の太さなどを記録。年月をかけた変化を追っていく。2カ所で成木1000―2000本ほどになる。

多くの研究者は特定地域の3種類ほどの森林を研究対象とするが、西村教授の若い時分には年に2カ所、5年で1度ずつといったペースで回っていたという。CO2が樹木の体をつくる有機物に変化し、固定される「炭素吸収量」や、樹木の体積としての「バイオマス現存量」などは、こういった調査データが基礎になって導かれている。

東京大学などとの共同研究では、東アジアから東南アジアの森林60カ所の継続調査データを使い、樹木種と森林全体の炭素生産量の傾向を明らかにした。以前から「樹木の種類が多様になると、森林の面積当たりの炭素生産量が高くなる」ことは知られていたが、その理由は分からないままだった。

共同研究においては、熱帯林や亜熱帯林などのより温暖な気候では、樹木の種類が多様になるにつれて特に低木種の種類が増加。相対的な炭素生産量が高い低木種の比率が大きくなることで、森林の面積当たりの炭素生産量が高くなる、というメカニズムを明らかにした。

24年度スタートの森林環境税はまだなじみが薄いが、自治体による森林整備などの財源に充てるため、1人当たり年1000円が徴収される。「植栽の人工林の整備や、害獣や自然災害による被害の回復などに使われる」(西村教授)。

J―クレジットは、適切な森林管理によるCO2の吸収量や、省エネや再生エネによるCO2削減量を、国がクレジットとして認証する制度だ。林業が成立しなくても、自治体は所有する森林を健全にしていくことで有利になる。そのため森林の多様な研究に、従来と違う寄与をすることが期待されそうだ。

(2024/9/20 12:40)

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