(2024/11/15 12:00)
米国で19年に渡り研究員や教員をしてきた。研究をする上で多様性がいかに大事かをたたき込まれた。多様性があってこそ新しい発見やイノベーションが生まれると繰り返し語られたし、米国の大学や研究者のコミュニティーは多様性を強く意識している。マシュー・サイド著『多様性の科学』は自分で見つけた。学長として本学の多様性を意識する中、「多様性」と「科学」の組み合わせが目に留まった。
この本はいろんな実例が描かれている。CIA(米中央情報局)が「9・11」(2001年の米国同時多発テロ)を防げなかったことを記した第1章のほか、第2次世界大戦中、英軍がクロスワードパズルの愛好家を敵国(ドイツ軍)の暗号を解読するチームに入れた話やエベレストの登山隊に(人間関係の)ヒエラルキーがあったためにきちんとコミュニケーションできず遭難してしまう話などが興味深かった。
なぜ多様性がないといけないのか、集団として力を出すために構成員の多様性が重要といったことが説得力のある形で書かれている。いろんな人に薦めているが、企業の経営者にもぜひ読んでいただきたい一冊だ。
ジェイソン・ヒッケル著『資本主義の次に来る世界』は友人から薦められて読んだ。
資本主義に疑問を抱いたことなどなかったし、新しいテクノロジーを生み出しても本当の持続可能性につながらないかもしれないと指摘していてショックを受けた。科学者はもちろん職業として研究をするが、それだけではだめで、市民あるいは地球市民として、この社会や地球のあり方についても考えないといけないと思った。
謝辞の一番最後の言葉「疑問を持つことは、何より強力である」も衝撃的だった。科学者は疑問を持つことが職業の一部のはずなのに、疑問を持ってなかったことがいっぱいあるやろ、と突きつけられた気がした。
この本に書いてあることに100%同意するわけではないが、問題意識を持ち、自分の頭で考えることが大切だと再認識した。
(2024/11/15 12:00)
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