社説/年金制度改革 就労促進に期待も課題なお山積

(2024/12/25 05:00)

社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)年金部会は24日、5年に1度の年金制度改革に向けた報告書案を公表した。パートタイマーなどの短時間労働者や高齢者の“働き控え”を緩和する施策が示され、人手不足の中で就労の促進が期待される。

ただ懸案である基礎年金の底上げは明確な方向を示さなかった。将来的に兆円単位の財源が必要とされ、政府・与党に判断を委ねたとみられる。年金制度改革案は2025年の通常国会に提出予定で、少数与党の判断と法案の行方を注視したい。

報告書案では、厚生年金への加入が求められる最低年収「106万円の壁」撤廃や、働く高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金」を見直す方向が示された。週20時間以上働けば年収によらず厚生年金に加入し、働くシニアの厚生年金も減額される収入の基準額を引き上げる案などが盛り込まれた。女性や高齢者の就労促進により人手不足が緩和し、「壁」の撤廃により非正規雇用者らの老後保障も手厚くなると期待したい。

ただ厚生年金の財源の半分は企業が支えるため、中小企業の負担増が懸念される。報告書案では、企業の負担割合を抑える制度の検討を求めており、政府・与党は議論を深めてほしい。

一方、報告書案は、基礎年金の給付水準を引き上げる抜本改革で結論を出せず、政府・与党の判断に委ねられる。財政が比較的安定している厚生年金の積立金の一部活用や国庫負担が想定される。将来的に兆円単位の財源をいかに確保するかが大きな課題で、年金制度改革案の制度設計と国会での与野党の法案審議を注視する必要がある。

経団連と連合が段階的・将来的な廃止を求める「第3号被保険者制度」の見直しも年金部会で意見を集約できず、見送られる。専業主婦世帯を優遇する同制度は、女性の社会活躍を阻む要因の一つとされている。一方で、育児や介護を理由に、働きたくても働けない専業主婦があることも看過できない。共稼ぎ世帯が主流を占める中、いかに制度を見直すのか、5年後の実現に向けて熟議を重ねたい。

(2024/12/25 05:00)

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