産学連携・パートナー企業と共創。カーボンニュートラルを目指す富士電機の今【PR】

(2022/9/26 00:00)

 富士電機は再生可能エネルギーを含む発電設備、受配電設備、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などのエネルギー供給側から、工場や自動車、鉄道などで使う変圧器、モーター、パワー半導体といった需要側まで、サプライチェーン全体の脱炭素に関わる事業を展開している。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて重要となる脱炭素関連製品・技術の研究開発では、強みとするパワーエレクトロニクスの技術を磨くのに加え、大学や企業とのオープンイノベーションを通じ、二酸化炭素(CO)の分離回収技術といった新技術の実用化に取り組んでいる。

※撮影時以外はマスクを着用し、新型コロナウィルス感染症への対策を行った上で取材しています。

脱炭素化 加速へ

 脱炭素分野における富士電機の研究開発は、2020年10月 に政府が2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げてから、潮目が大きく変化した。IT世界大手「GAFA」のような欧米企業が、カーボンニュートラルのエネルギーや製品でなければ採用しないという方針を打ち出しているように、富士電機の顧客にも同様の動きが出てきている 。技術開発本部 新製品開発プロジェクト室長 外山健太郎氏は「カーボンニュートラルに対応する顧客の動きは非常に速く、製品投入のタイミングが当初計画より3年程度早まるケースも出てきている」と状況を説明する。

 また、従来は環境対応製品に顧客が求めるのは、省エネルギー性能が大部分を占めていた。これに対し現在は、「さまざまな業種や業態に対し、脱炭素の“変化球”が求められるようになった」(外山室長)という。例えば、変電所向け開閉器(GIS)の絶縁媒体を温暖化係数の高い六フッ化硫黄(SF)ガスからドライエアに切り換えたいという要望や、船舶の排気ガスから硫黄酸化物(SO)を取り除くスクラバーと組み合わせてCOも分離回収したいという話が出ている。脱炭素に関するニーズがさまざまな業種、業態に生まれ、求められる製品・技術にも広がりが生まれている。

脱炭素関連技術の「共創」に向けた組織体制

技術開発本部 新製品開発プロジェクト室長

外山 健太郎 氏

 市場の変化するスピードや顧客、ニーズの広がりを見ると、「脱炭素関連技術の開発を一社単独で進めるのは現実的でなくなっている」(外山室長)。そのため、研究開発では大学や研究機関、パートナー企業と連携し、「共創」していく方針を明確にしている。カーボンニュートラルはひとつの商材だけで達成するのは難しく、トータルのシステムとして実現していくものだ。足りない商材や技術の探索、獲得も戦略的に進める必要がある。

 この点について富士電機では2017年にオープンイノベーションに取り組む新たな組織を立ち上げ、活動を発展させてきた 。研究開発部門で製品や技術の開発に携わった人間が、事業部に移って事業の立ち上げまで関わるという人材のローテーションもより活発に行っている。新製品開発プロジェクト室は、経営層や事業・営業部門とともに技術開発や社外連携の進め方を検討しつつ、2022年4月に新設したカーボンニュートラル推進部門 と協力して関連商材を各事業に展開する役割も担っている。

九州大学とのオープンイノベーションで脱炭素社会のシナリオを構築

技術開発本部 新製品開発プロジェクト室

技術マーケティング部 主席 齋藤 秀介 氏

 富士電機のオープンイノベーションで象徴的なのが2010年から包括連携契約を結んでいる九州大学との共同研究だ。「延べ67件の連携実績があり、中でもパワー半導体材料である炭化ケイ素(SiC)は材料から回路構成までの広い領域で共同研究を重ねてきた」(新製品開発プロジェクト室 技術マーケティング部主席 齋藤秀介氏)といい、パワー半導体事業の成長を牽引する製品や技術を生み出している。

 カーボンニュートラルでは、九大の「カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所」(ICNER、通称 アイスナー)とともにCO回収・利用・貯留(CCUS)の市場や技術の動向を見通すシナリオ構築に取り組んできた。火力発電にCCUS技術が導入されるのはいつ頃で、どのくらいの規模で始まり、最初の顧客は誰になるのか、事業化に向けた資金調達の環境はあるのか-。こうしたシナリオを考えて分析し、必要な要素技術を絞り込んで、共同研究につなげる取り組みだ。「技術だけでなく経済の観点も取り入れ、脱炭素社会という経験したことのない価値観を描く、富士電機でも初めての試みだった」(外山室長)。

CO分離回収技術「膜分離システム」

 CO分離回収技術は九大と共同研究の中で取り組み、脱炭素への大きな貢献を期待できる重要技術の一つ。富士電機がこの共同研究で ターゲットとするのは、重工メーカーなどが大規模な発電所向けに進める化学吸収法(アミン法)とは異なる、出力10メガワット前後の発電システムやコージェネレーション(熱電併給)システム、船舶エンジンなどに適用できる小規模なCO分離回収の技術。有機系の膜を使うため、「膜分離システム」と呼んでいる。富士電機は吸着材料などの開発や、COの分離前に粒子状物質(PM)などの介在物を取り除く前処理技術などを社内でも研究しており、九大との研究成果と掛け合わせることで、膜分離システムの実用化を目指している。

 すでに船舶関連の顧客との間で、船舶に搭載する装置の処理能力などについて情報交換を進めており、2023年内にも船舶向けの実用化を見据えた、地上実証用設備をつくる計画だ。燃料の種類に応じた前処理の方法や設備メンテナンスも含めたライフサイクルなどを検証していく。2025年頃には船舶向けを実用化し、続けて工場のコジェネ向け、バイオマス発電設備向けへと膜分離システムを展開していく考え。日本政府が2050年の目標として掲げる、世界の分離回収市場の3割のシェア獲得に対して、富士電機はその5分の1のシェア獲得を目指している。

(2022/9/26 00:00)

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