(2021/12/7 05:00)
政府は国民に方針を説明するとともに、その効果を最大限に発揮するよう努めてほしい。
政府の2021年度補正予算案は、各種の超大型経済対策とともに、防衛費でも過去最大規模の7738億円を計上した。特に装備品として22年度予算で要求していた哨戒機や輸送機を前倒しで認めたことは、防衛当局も「前例が全くないわけではないが画期的」と話す。
これには二つの意味がある。防衛省首脳は中国や北朝鮮の軍備拡張への対応を念頭に「ギャップを埋める必要があり、1日も早く進めたい。安全保障について日本は最前線の国家として世界各国に認識されている。日本のふるまいが重要になっている」と危機感を強調する。今回の補正を「防衛力強化加速パッケージ」と命名したのも、その表れだ。
もうひとつの意味は景気対策である。補正予算が成立すれば防衛省は3月までに装備品メーカーと契約する。メーカー側は受注残が増え、部材の協力企業へも発注を前倒しする。また補正には同時に、防衛装備品の費用の前払いを計上した。経団連や防衛産業界の要望を受けたもので、前払いによってメーカーには資金的余裕ができる。防衛装備品には中小企業も多く、こうした措置は過去にも何度か実施している。
いずれも補正予算のあり方として納得できる。しかし問題は防衛費全体のコントロールが難しくなった点だ。補正で装備を前倒し獲得した分、翌年度予算を削るのだろうか。
日本の防衛費は長い間、国内総生産(GDP)対比で1%をめどとしてきた。今回の大型補正はこれを大きく逸脱する。財政当局は厳しい経済環境の中で今後、どう査定していくのか。
また最先端装備が米国からの調達に傾いている現状も改めたい。研究開発の予算を強化することで国産の技術力を高めていく必要があろう。
防衛費の増額には国民の納得と政治主導が欠かせない。政府には産業界とも連携して、多額の予算の効果を十分に発揮するよう求める。
(2021/12/7 05:00)
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