(2022/12/27 15:30)
PLCに組み込める「熟練者の勘」で不良を検知
金属加工や食品包装、半導体製造など、工場のさまざまな生産ラインを動かすのは、サーボモーターとその動きを制御するプログラマブルコントローラー(PLC)からなるモーションシステム。近年はモーターの動きを制御して、高速かつ正確に加工を行うだけでなく、生産ラインにおける不良品を検出することも求められている。富士電機はこのニーズに応えるため、PLCに組み込んで製品加工の異常を検知し、原因を分析する「異常診断ソリューション」を提供している。(図1)
不良検出装置の小型・低コスト化が課題
生産ラインで発生する不良はさまざまだが、例えば食品業界では、不良品が市場に出てしまうと消費者のマイナスイメージにつながりやすく、商品の売り上げに大きな影響を及ぼす場合がある。そのため、食品を包装する食品包装機でも不良品の発生防止の仕組みに対する要望が高まっているという。
食品の包装加工では、フィルムを筒状にして食品を包み、食品の背中側と前後のフィルムを熱で溶着(シ-ル)し、切断する。この工程で発生する不良としては、食品やその一部を噛み込んだまま溶着したり、溶着部によれやしわができたりすることがある。食品を密封できずに、風味の劣化や異物の混入につながる可能性があるため、発生防止に強い要望がある。(図2)
こうした不良を防ぐため、従来は包装加工後の工程に検査装置を設置するといった対策が取られてきたが、装置全体が大きくなりコストが増えることが課題となってきた。
サーボモーターをセンサーとして活用
この課題に対して富士電機が提供する「異常診断ソリューション」では、フィルムを溶着し切断する機構を動かすサーボモーターをセンサーとして利用する方法を提案している。異物をかみ込んだままフィルムを溶着した場合などにモーターにかかる負荷トルクの値を抽出して分析し、加工機械の異常動作を検知する。異常と正常の診断結果を利用すれば、PLCの機能を使って生産ラインから不良品を排出する仕組みも容易に実装できる。診断データをPLCに蓄積して、異常時の詳細データをディスプレー(プログラマブル表示器)で確認できるほか、CSV形式のデータファイルで取り出して原因をさらに分析することも可能。別置きの検査装置が不要になり、装置全体の小型化やコストの低減を見込める。
アナリティクス・AIを搭載し、異常データをリアルタイムに検知
「異常診断ソリューション」の診断機能は、いわば熟練者の長年の経験にもとづく「勘」のようなものだ。その機能を実現するのは、富士電機のPLC「MICREX-SX」シリーズの「診断モジュール」に搭載するアナリティクス・AI(人工知能)。多変量統計的プロセス管理(MSPC、Multivariate Statistical Process Control)と呼ばれる技術を使って、モーターを制御するサーボアンプや制御用ソフトウエアなどの正常状態データと加工中のデータをリアルタイムに比較し、わずかな異常を一瞬で検知する(図3)。AIは温度や圧力といった、あらかじめ選んだ診断対象の正常加工時データを集めて、比較対象となる「診断モデル」を生成するのに加え、生産数などの一定の基準を設けて定期的に更新することで検出の精度を維持する。
プログラミングも容易
ソリューションの利用者は、プログラミング支援ツールを使って、解析、判定、出力といった機能を持つソフトウエアの集まり(システムファンクションブロック)を組み合わせるようにして、さまざまな加工機械に応じた診断プログラムを容易に構築できる(写真1)。支援ツールは国際規格IEC61131-3(JIS B 3503)に準拠し、OS(基本ソフト)はWindowsに対応。ラダー言語やST言語など、規格で規定されている5つのプログラミング言語を使えるほか、実機を使わずにプログラムの動作をテストするシミュレーション機能も備える。
(2022/12/27 15:30)