社説/24・25年の日本経済 「成長型経済」へ国内投資さらに

(2024/12/27 05:00)

日本経済は2024年に大きな転換期を迎えた。物価も賃金も金利も上昇する成長型経済の入り口に立つことができた。株価も経済の変化を好感し、バブル期の史上最高値を更新した。だが入り口に過ぎない。実質賃金は増加に転じず、デフレ脱却宣言は封印されたままだ。円の購買力も固定相場時代並みに低い。世界情勢が不安定な中、日本は次のステージに進めるのか、停滞するのか。25年は予断を許さず、気を引き締めたい。

24年春季労使交渉(春闘)での賃上げ率は33年ぶりに5%を超え、日銀は11年にわたった大規模金融緩和に終止符を打ち、17年ぶりの利上げに転じた。30年停滞していた賃金や金利が動き出し、日本は「普通の経済」を取り戻し始めたと言える。この流れを停滞させることなく、25年に定着させる必要がある。

気がかりなのは、円の購買力の低さだ。構造的とも言える円安はコストプッシュ型の「悪い物価上昇」を招き、歴史的な賃上げも物価上昇に追い付かない状況が続いている。国内総生産(GDP)の過半を占める個人消費を動かすには、実質賃金のプラス転換が欠かせない。25年春闘での高水準の賃上げはもとより、国内での成長投資を積極化するなど、企業は株主還元にとどまらない幅広い利益配分に目配りすることが求められる。

日銀によると、11月の実質実効為替レート指数(20年=100)は70・65で、固定相場時代の70年8月の73・45を下回る。日米の金利差だけが理由ではない。日本企業が海外で稼いだ第1次所得収支の半分は、日本に還流せずドルのまま海外で再投資される。結果、GDPは伸び悩み、ドイツにも抜かれた。

海外で稼いだドルが円に換金され、国内投資に向かえば、過度な円安も是正されるはずだ。人工知能(AI)やデジタル化を支える先端半導体、次世代電池、バイオ・ヘルスケアなどへの国内投資を拡大し、日本市場の魅力を高める必要がある。

25年は米中経済に不透明感が漂い、中東情勢の行方も気がかりだ。世界情勢が予測不能なだけに、まずは足元を固めたい。

(2024/12/27 05:00)

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