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(2018/5/30)
カテゴリ:イベント
リリース発行企業:株式会社東京ニュース通信社
第36回(2017年度)向田邦子賞贈賞式
優れた脚本作家に贈られる向田邦子賞(向田邦子賞委員会・株式会社東京ニュース通信社主催)の第36回贈賞式が5月29日(火)、東京・千代田区の帝国ホテルで行われました。 第36回の受賞者は4月3日(火)に行われた選考会で、バカリズム氏に決定。受賞作は、読売テレビにて2017年4月13日~6月15日に放送された「架空OL日記」です。
発表からおよそ1カ月半。多忙なスケジュールの合間を縫って贈賞式に出席したバカリズム氏が、初めて公の場で受賞の喜びを語りました。式には、「架空OL日記」の演出を手掛けた住田崇監督、女優の佐藤玲さん、山田真歩さんら共演者のほか、いとうせいこうさんらバカリズム氏と親交の深いゲストが多数駆けつけ、思い思いの言葉で祝福。脚本家としてのさらなる活躍に期待を込めて、受賞を称えました。
<バカリズム氏 受賞スピーチ>
この度は、非常に素晴らしい賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。この作品は元々、今から10年くらい前に、僕が個人的な趣味、暇つぶしで始めた架空のブログがきっかけで、OLさんに成り済まして、自分の友達5,6人を笑わせるためだけに書いていたんです。最初は「バカリズム」という名前も伏せていたものですから、ちょっとずつ口コミで広がっていくなかで、僕のことを知らないOLさんから「私も同じようなことがありました」と言われたり、サラリーマンの方に「この間、どこどこの居酒屋の隣のテーブルにいたOLさんですよね」ってコメントを書かれたりして、本当のOLさんだと思われたのが楽しくて続けていました。途中から、バカリズムと名前を出して、数年後に書籍化されまして、それからさらに広がってドラマ化されることになり、いつのまにか最終的に向田邦子賞をいただくことができ、この展開の方がむしろドラマっぽいなというのが正直な気持ちです。
この作品で一番こだわったのは、やはり会話のリアリティーで、ハラハラドキドキするような展開こそないけども、自分も会話に参加しているような気持ちや、こういった職場で働きたいなと思ってもらえるような作品にすることでした。ですので、通常のドラマで入れるような展開や台詞は一切排除して、ドラマだったら入れないような台詞や無駄な間をとにかく盛り込み、リアルにすることに徹しました。
スタッフさん、監督さん、演者さん、皆さん同じようにこの世界観を面白がってくれて、より面白い「架空OL日記」の世界を作り上げていただきました。この作品に関わった皆さんの力があったからこそで、皆で頂いた賞だなと思っております。今後も形にとらわれず、自分が面白いと思った作品を発表できるように頑張りたいと思います。今回が第36回ということなので、37回目も頂けるように、2連覇できるように頑張りたいと思います(笑)。本日はどうもありがとうございました。
【「架空OL日記」監督・出演者より祝福コメント】
<住田崇監督>
向田邦子賞受賞の知らせを聞いた時、初めて二人で抱き合いました(笑)。これまで升野さんと新しいことをいろいろやってきて、常に升野さんはお笑いに関しての新しいフォーマットを作ってこられたなという印象があります。その都度「また新しいことをやったから、いろんな人が評価してくれるかな」と二人でよく話していたんですけど、ずっとスルーされ続けていたので(笑)、「架空OL日記」が評価され、升野さんの才能が公になっていくことは本当に嬉しいなと思いました。これをきっかけに、升野さんの過去の作品に触れられる機会が増えればいいなと個人的に思っています。また新しい作品をできればと思いますので、宜しくお願い致します。
<山田真歩さん>
私の周りで、実際に会社に勤めている人たちが放送を楽しみにしていて、「ありがとう」と言われたので、演じていても楽しかったですし、みんなが笑ってくれるのがすごく楽しかったです。でも、最初に台本を見た時は「これ何だろう?」と(笑)。他愛もない会話がずっと続いていて、ドラマチックな展開が何もなかったので、こういう台本は初めてだなと思いました。他愛もないちょっとした日常を、こんなに面白く書けるバカリズムさんが向田邦子賞を受賞されて本当に嬉しく思っています。ちょうど「架空OL日記」を演じたすぐあとに、向田邦子さんの役を演じる機会があったんです。偶然ですが、大石静さんの脚本で、すばらしく楽しい時間でした。向田邦子さんのことをたくさん調べた時に、エッセイの中で「至らない人間の至らないドラマを見るのが好きだった」、「欠点だらけの男や女の、滑った転んだが書けたらいいな」と書かれていたので、向田邦子賞はバカリズムさんにふさわしい賞だと思いました。おめでとうございます。
<佐藤玲さん>
おめでとうございます。最初に脚本を読んだ時、「あぁ」とか「えっ」など、相槌まできっちり書かれていて、どうしたものかなと思いました。でも、いろいろお話をしていくなかで、台詞を相槌まできっちり言うことよりも、この台本を自由に楽しく演じていけばいいのかなと思うようになりました。こんな素敵な場所に連れて来ていただいてすごく感謝しております。ありがとうございました。
また、同じく「架空OL日記」で共演した夏帆さんからはビデオメッセージが、臼田あさ美さんからはお祝いメッセージが届き、バカリズム氏への嬉しいサプライズとなりました。
<夏帆さん ビデオメッセージ>
バカリズムさんの脚本はすごく独特で、今まで私が読んできたどの脚本よりも台詞が日常会話に近いなと思いました。ナチュラルな台詞の中にも、バカリズムさんの毒が所々に散りばめられていて、読んでいても面白いですし、演じていても楽しかったのを覚えています。現場で、バカリズムさんがドラマの脚本を書きながら、演じて、ドラマが休みの日にはバラエティーの収録もあって、本当にお忙しくされているなと。今回の受賞で、ますますバカリズムさんがお忙しくなってしまうんじゃないかと勝手に心配しているんですけど、ぜひまたご一緒して、「架空OL日記」の続編ができたらいいなって思っています。本当におめでとうございます。
<臼田あさ美さん>
オンエアから時間が経ちましたが、今でもあちこちで「面白かった」」という感想を耳にし、一参加者として私も嬉しく思っています。升野さんの睡眠時間が少しでも長く確保されることを祈りつつ、裏腹にこれからもたくさんの作品を世に生み出してください。またご一緒できることを楽しみにしております。
さらに贈賞式の終盤、いとうせいこうさんが別の仕事現場より急遽駆けつけ、壇上へ。「師弟関係」だというバカリズム氏に独特の表現で賛辞を送ったほか、知られざるエピソードも披露。熱のこもったスピーチで会場を盛り上げました。
<いとうせいこうさん>
バカリズムとは本当に長い仲で、自分としても師弟関係のように思っています。僕は「架空OL日記」の本のあとがきでも書いているんですけど、実際に彼がこのブログを書き続けていた時は、誰もバカリズムがやっているとは分からない、何のアテになるかも分からない状態でした。オチもない、山もない、そういうOLになりきって延々続けているのを見つけまして、言い出せない狂気みたいなものを感じました(笑)。今はこういう立場になったので、升野くんが何かを書けば本になるかもしれない、映画になるかもしれない、テレビドラマになるかもしれない、ネットの中で配信されるかもしれない。でも、そのときは誰でもないんですよ。誰でもない人間として、一人の女の人になりきって延々と書いているこの状態をよく考えてください。完全に狂っています(笑)。その狂ったものを、ようやく10年くらいかかって彼が作品にできるようになった。世の中もそうなったし、彼もそのように成長した。そのことに感動して、僕はここに来ました。このドラマはずっと見ていたので、また第2弾もやってほしいし、延々続けてほしいなと思っていますが、ぜひ活字のほうも読んでいただきたいですね。彼が何者でもない時に、どういうリアリティーのあるOLを書いていたのか、訳の分からないままそれを受け入れて、彼の素の部分を理解いただければ、彼の才能を素晴らしいと思う人間として、これほどのことはありません。
なお、歓談の時間には、今年からの新たな試みとして、受賞者の出身地にちなんだスペシャルメニューを用意。今回はバカリズム氏が福岡出身であることから、本人もよく食べていたという「福岡うどん」が振る舞われました。最後はバカリズム氏が「ありがとうございました」と深々と感謝。会場が大きな拍手に包まれるなか、盛大に行われた第36回向田邦子賞贈賞式が閉幕しました。
<バカリズム氏プロフィール>
1975年福岡県出身。1995年バカリズムを結成、2005年12月よりピン芸人として活動。テレビドラマの脚本に、『素敵な選TAXI』(関西テレビ)、『かもしれない女優たち』(フジテレビ)、『桜坂近辺物語』(フジテレビ)、『黒い十人の女』(読売テレビ)、『住住』(日本テレビ)などがある。
<向田邦子賞とは>
故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績をたたえ、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に送られる賞として、1982年に制定されました。主催は『TVガイド』を発行する東京ニュース通信社で、選考は歴代受賞者らによる向田邦子委員会が担当しています。前年度に放送されたテレビドラマを対象に、選考委員がノミネート作品を選定。本選を含めて4回の討議を経て受賞作品を決定しています。選考委員は池端俊策氏、冨川元文氏、大石静氏、岡田惠和氏、井上由美子氏(向田邦子賞受賞順)。
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