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東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査2017」結果速報 勉強や目標が「自己肯定感」に影響

(2018/5/31)

カテゴリ:調査レポート

リリース発行企業:株式会社ベネッセホールディングス

東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査2017」結果速報 勉強や目標が「自己肯定感」に影響

保護者や先生の働きかけで高められる可能性

 東京大学社会科学研究所(東京都文京区)と株式会社ベネッセホールディングスの子会社である株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市)の社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」は、2014年に、「子どもの生活と学び」の実態を明らかにする共同研究プロジェクト(親子パネル調査)を立ち上げました。


 このプロジェクトでは、同一の親子(小学1年生から高校3年生、約2万1千組)を対象に、2015年以降、複数の調査を実施し、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにしてきました。今回は、2015~2017年の3時点(2年間)における調査から、長年にわたり低いと指摘されている子どもたちの「自己肯定感」に注目しています。自己肯定感は、自立した学習者・生活者を支える基盤となるもので、本調査では、どうすれば子どもたちが自信を持ち、自分の未来を切り開いていけるのかを分析しました。子育てや教育に関わる多くの方に、子どもの自己肯定感を高める方策を考える資料としてご活用いただければ幸いです。

 今回の主な分析結果は、以下の通りです。
I.自己肯定感の現状
【現在】「自分の良いところが何かを言うこと」が「できる」55.3%、「できない」43.4%。【図1】

●小4生から高3生に、「自分の良いところが何かを言うことができる」かをたずねたところ、
「言うことができる(とてもあてはまる+まああてはまる)」(以下、「肯定」)は55.3%だった。
「できない(まったくあてはまらない+あまりあてはまらない)」(以下、「否定」)は43.4%だった。
【変化】2年の間に、自己肯定感が「肯定→否定」「否定→肯定」と変化した子どもが5割。【図2】
●2015年・2016年・2017年の3時点(2年間)で、自己肯定感が「ずっと肯定」を維持している
子どもは31.1%であり、「ずっと否定」のままの子どもは20.3%である。
●残りの48.7%の子どもは、「肯定→否定」「否定→肯定」など自己肯定感が変化している。

II.自己肯定感を高める要素(2年の間の勉強・目標の変化)
【成績】成績が上昇した子は、自己肯定感が高まっている。【図3】

●2年の間に、成績が「下位→上位・中位」に上昇した子どもは、成績が「ずっと下位」の子どもに比べて、自己肯定感が「ずっと肯定」の比率(29.2%>20.9%)や、「否定→肯定」へと肯定的に変化した比率(22.0%>17.5%)が高い。
【勉強の好き嫌い】勉強が好きになった子は、自己肯定感が高まっている。【図4】
●同様に、2年の間に、勉強が「嫌い→好き」に変化した子は、勉強が「ずっと嫌い」の子どもに比
べて、自己肯定感が「ずっと肯定」の比率(29.5%>20.7%)が高く、また、他の子どもに比べて
「否定→肯定」へと肯定的に変化した比率(20.7%)も高い傾向がある。
【将来目標】将来目標が明確になった子は、自己肯定感が高まっている。【図5】
●2年の間に、将来の目標が「不明確→明確」になった子どもは、将来の目標が「ずっと不明確」の子どもに比べて、自己肯定感が「ずっと肯定」の比率(29.2%>16.9%)や、「否定→肯定」へと肯定的に変化した比率(26.3%>16.7%)が高い。

III.自己肯定感を高める要素(2年の間の人間関係の変化、現在の保護者の意識)
【学校】自分のクラスに愛着を感じるようになった子は、自己肯定感が高まっている。【図6】

●2年の間に、自分のクラスが「嫌い→好き」に変わった子どもは、自分のクラスが「ずっと嫌い」の子どもに比べて、自己肯定感が「ずっと肯定」の比率(20.9%>7.6%)や、「否定→肯定」へと肯定的に変化した比率(22.6%>16.9%)が高い。
【家庭】保護者が「努力の効果」を感じているほど、子どもの自己肯定感が高い。【図7】
●保護者が「努力すればたいていのことはできる」と感じているほど、子どもの自己肯定感が高い(「肯定」の比率は、「とてもそう思う」では60.5%、「まったくそう思わない」では44.7%)。

■調査結果からわかること ~自己肯定感を高めるポイント~
【自己肯定感の現状】

 今回取り上げた「自己肯定感」については、長年にわたり、日本の子どもたちの数値の低さが指摘されてきました※1。本調査でも、「自己肯定感」をはかる項目の1つである「自分の良いところが何かを言うことができる」を「肯定」する子どもは55.3%、「否定」する子どもは43.4%と、自分の長所が言えない子が約4割いました(小4生から高3生、2017年)。
 しかし、本調査で2015年・2016年・2017年の3時点(2年間)の子どもを追跡した結果、さらに明らかになったのは、自己肯定感をずっと維持している子ども(「ずっと肯定」)は約3割にとどまり、約半数(48.7%)の子どもが「肯定→否定」「否定→肯定」と変化しているということです。この結果は、子どもたちが「自己肯定感」を持ち続けることの難しさとともに、子どもたちは、何かの理由で自己肯定感を持ち、高めることができる(「否定→肯定」に変わる)可能性を示しています。
【自己肯定感を高める要素】
 自己肯定感はどのような要素と関連しているのでしょうか。自己肯定感の変化に注目して分析すると、学校での成績が上昇した子や、勉強が「好き」になった子は、自己肯定感が高まる傾向がみられました。成績だけでなく、勉強に対する意識が関連しており、子どもが意識を変えていけるような動機づけや働きかけが大事だと言えます。また、特に関連がみられたのは、将来目標の有無で、将来目標が明確になった子どもの多くが、自己肯定感を高めています。子どもには、自分の将来について考えるきっかけや、経験の場などを作る働きかけが有効だと思われます。さらに、自分のクラスに愛着を感じるようになった子は自己肯定感が高まっており、クラスや友だち関係も重要な役割を果たしています。「努力の効果」を感じている保護者の子どもほど自己肯定感が高いなど、保護者の意識やかかわりも子どもに影響しています。このように、子どもが自分を肯定的に受け入れるためには、周囲の人間関係が重要であると考えられます。
【今後の分析】
 自己肯定感は、子どもが自信を持って自立への道を歩む土台となるものです。それは、本研究プロジェクトがテーマとする「生活者としての自立」「学習者としての自立」「社会人としての自立」を支える基盤であり、主体的・対話的に学習を進める重要な要素として、教育改革の課題の1つにもなっています(「学びに向かう力」)。本研究プロジェクトでは、今後も、親子ペアのパネル調査の特徴を生かし、自己肯定感を高める方策(保護者や周囲のかかわりのあり方)を検討するとともに、子どもが自立するうえでの課題とその解決にむけた分析・発信を続けていきます。
※1 内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2013年)、独立行政法人国立青少年教育振興機構「高校生の生活と意識に関する調査」(2014年)など。
●今回の調査結果は以下のページで公開しています。 ※分析レポートを、随時、掲載予定。
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5279

■「子どもの生活と学び」研究プロジェクト・親子パネル調査とは
小学1年生から高校3年生までの親子(約2万1千組の調査モニター)に対して、子どもの生活や学習の状況、保護者の子育ての様子をとらえる定期的な調査を毎年1回以上行い、子どもの成長のプロセスや成長に必要な環境・働きかけを明らかにしています。12学年にわたる親子の実態をとらえることができる調査としては国内で類をみない規模であり、子どもの成長・発達、子育て・教育のあり方を考えるうえで貴重なデータといえます。本プロジェクトでは、子どもの自立を「生活者としての自立」(主に2015年調査)、「学習者としての自立」(主に2016年調査)、「社会人としての自立(人間関係・価値観)」(主に2017年調査)の3つの側面でとらえ、調査を実施しています。

 ●調査のイメージ



 ●東京大学社会科学研究所・本プロジェクトHP:http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/clal/
 ●ベネッセ教育総合研究所・本プロジェクトHP:https://berd.benesse.jp/special/childedu/

■調査概要




■主な調査結果

I.自己肯定感の現状
【現在】「自分の良いところが何かを言うこと」が「できる」55.3%、「できない」43.4%。




【変化】2年の間に、自己肯定感が「肯定→否定」「否定→肯定」と変化した子どもが5割。



II.自己肯定感を高める要素(2年の間の勉強・目標の変化)
【成績】成績が上昇した子は、自己肯定感が高まっている。





【勉強の好き嫌い】勉強が好きになった子は、自己肯定感が高まっている。



【将来目標】将来目標が明確になった子は、自己肯定感が高まっている。



III.自己肯定感を高める要素(2年の間の人間関係の変化、現在の保護者の意識)
【学校】自分のクラスに愛着を感じるようになった子は、自己肯定感が高まっている。




【家庭】保護者が「努力の効果」を感じているほど、子どもの自己肯定感が高い。




   

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