[ オピニオン ]
(2015/11/12 05:00)
三菱航空機(愛知県豊山町)が開発してきた国産小型旅客機「MRJ」が11日、初飛行に成功した。まずは53年ぶりの国産旅客機の成功を喜びたい。MRJの事業化は日本の航空機産業が、部品ビジネスから完成機ビジネスへと変わる大きな分岐点となる。日本の将来に向け、官民を挙げて航空機産業のビジネスモデルの変革を確実に果たす必要がある。
航空機産業は、中長期でみれば確実に成長が見込める。日本航空機開発協会による市場予測では、2015年からの20年間の世界のジェット旅客機の新規納入機数は3万2688機。販売額(14年カタログ価格ベース)では4兆7500億ドルにのぼる。
しかし日本の航空機産業は欧米に比べて5分の1程度の規模しかなく、拡大する需要を十分に取り込めない恐れがある。こうした現状を脱却するきっかけがMRJだ。主翼や胴体、各種部品にとどまっていた従来の日本企業の部品ビジネスに完成機ビジネスが加われば、付加価値や、技術波及力は格段に広がる。
残念ながら、MRJはエンジンや高度な装備品を海外メーカーに頼っている。まずはエレクトロニクス関連の装備品を中心に、国内で調達できるようにするべきだろう。政府も、三菱航空機と関連企業の連携を支援する必要がある。
MRO(整備・修理)や補修部品のビジネスも重要だ。戦後初の国産旅客機「YS11」の事業が軌道に乗らなかった一因は、補修部品の供給体制の不備だった。また人手に頼るMROなら国内での雇用確保にもつながる。補修部品であれば中小・中堅企業も参入しやすい。
完成機ビジネスは一筋縄ではいかない。後発のMRJは、競合するブラジル・エンブラエルやカナダ・ボンバルディアよりブランド力が低い。さらに航空機業界の二巨頭である米ボーイングや欧エアバスは、設計技術でも生産技術でも日本より格段に優れている。
航空機産業は日本の成長戦略に直結する。完成機ビジネスをテークオフさせ、次世代の日本経済の進路を切り開いてもらいたい。
(2015/11/12 05:00)