[ オピニオン ]
(2015/11/16 05:00)
電力システム改革の本丸である家庭向けの電力小売り事業が半年後に自由化され、競争原理が本格的に導入される。”岩盤規制“に守られてきた電力各社が、収益力の強化と持続的な成長に向けてどのような方策を打ち出すかが問われる。視野をさらに広げて投資家や需要家、地域社会と価値観を共有し、その期待に応えることで競争力を高めていく必要がある。
全面自由化後は電力の供給にかかる費用を合計した上に適正利潤を乗せる「総括原価方式」で電気料金を定める制度が緩和され、収益の安定性を確保しにくくなる。こうした中で電力各社が事業の安定性や継続性、成長性を維持するには国内外の投資家からリスクマネーを呼び込み、持続的成長に向けた戦略投資を実行することが重要になる。
合併・買収などの難しい決断を迫られる局面もあろう。リスクを伴う投資にも果敢に挑み、資本効率を高めて市場の高評価を得なければならない。
需要家との信頼関係も重要だ。特に地域社会との絆は、電力会社に不可欠の事業基盤となる。全面自由化で従来の営業区域以外の家庭に電力を販売できるようになっても、地域社会とのつながりを忘れてはならない。
この点で東京電力の試みが注目される。山梨県と連携し、県営の水力発電所で起こした電力を、16年度から地元の中小製造業や県外からの進出企業に、通常より低料金で供給するという。ユニークなのは、県が対象企業を産業振興の観点から選定する点だ。エネルギーコストの増大が、日本の経済成長や対日直接投資の足かせとなっている中だけに、地元経済を盛り上げてもらいたい。
電力各社は地方創生に向けた政府・自治体の取り組みとも歩調を合わせ、地域の活性化につながる事業に一層、力を入れるべきだ。各地の経済活動が盛んになれば、電力会社自らの顧客基盤や収益基盤も強固になり、再投資への意欲も高まる。このような好循環が生まれれば、電力業界へのリスクマネー供給を含めて対日投資が活発になるはずだ。
(2015/11/16 05:00)
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