[ オピニオン ]
(2015/11/17 05:00)
わが国景気は踊り場局面にあることが明らかになった。内閣府が16日発表した2015年7―9月期の実質国内総生産(GDP)が前期比年率0・8%減と2四半期連続で減少したためだ。米国ではマイナス成長が2四半期連続すると「リセッション(景気後退)」と判断される。わが国の現状はそこまで深刻ではないが、先行きに楽観してもいられない。
前期に最大のマイナス要因となった個人消費は、雇用所得環境の改善に伴って持ち直し、輸出から輸入を差し引いた外需もGDPの押し上げに働いた。しかし中国経済の成長鈍化を受けて設備投資が大幅に減少し、成長の足を引っ張った。企業の15年4―9月期決算は総じて好調で、最高益を記録した例も多かった。そうした中での企業部門の不振は、マインドの冷え込みが主因とみられる。
こうした状況から追加の経済対策を期待する声が高まり、政府が12月にも編成する補正予算の規模に影響を与えよう。日銀には追加緩和の圧力がかかることになる。日銀の黒田東彦総裁は「緩やかな回復が続いている」と強気の景気判断を示しており、10月末の金融政策決定会合では追加緩和の実施を見送った。しかし12月調査の短観で企業の景況感が一段と悪化した場合には、追加緩和に踏み切らざるを得なくなるのではないか。
10―12月期は中国経済の減速の影響で輸出が伸び悩むとみられるが、雇用所得環境の改善が進んで個人消費が回復し、設備投資も反転する公算が大きいため、踊り場から脱するものと予想される。ただ設備投資の先行指標とされる機械受注は7―9月期に前期比10%減と大きく落ち込んでおり、今後への影響が懸念される。
政府は官民対話を通じ、企業経営者に対して設備投資をもっと積極化するよう呼びかけた。一方、産業界は規制緩和など企業活動を後押しする環境づくりを求めた。首相が提唱する”新3本の矢“では強い経済を掲げているものの、具体策に欠ける。政府はもともとの第3の矢である成長戦略を推し進め、企業の積極姿勢を引き出してほしい。
(2015/11/17 05:00)
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