[ その他 ]
(2015/11/30 05:00)
「記憶するだけではいけないのだろう。思い出さなくてはいけないのだろう」。小林秀雄は1942年(昭17)に発表した『無常ということ』で、そう説いた▼生きている人間は「何を言い出すのやら、しでかすのやら」。それに対して死者は「動じない美しい形しか現れぬ」。第二次大戦下のゆがんだ社会の中で、小林は人のありようを問うため、歴史に「常なるもの」の基準を求めた▼イノベーションが相次ぎ、パラダイム転換すらたびたび求められる現代社会のビジネスマンは、小林が「鑑賞にも観察にも堪えない」と酷評した時代の人間に劣らぬほど無常であるだろう。日々の生き残りの戦いの結果が、そうなるならやむを得ない▼日刊工業新聞はきょう、創刊100周年という大きな節目を迎える。企業活動とは少しく違うが、我々産業メディアも時として、先輩が歴史に刻んだ「常なるもの」を思い出すことには意義がある▼あすからの紙面も、きっと”無常なる“ニュースの海にこぎ出すことになろう。しかし産業界の最新の鼓動を伝え、その羅針盤たらんと一意専心すれば、きっと産業の発展に寄与できると信じる。引き続き皆さまの暖かいご支援と、厳しいご叱責(しっせき)をお願い致します。
(2015/11/30 05:00)