[ オピニオン ]
(2015/12/11 05:00)
政府・与党は2017年4月の10%への消費増税時に導入する軽減税率の概要を決めた。複数税率やインボイス(税伝票)の導入に抵抗してきた産業界にとっては残念な結果だ。実際の制度運用では、特に中小企業の経理事務負担が過大にならないよう、政府に格別の配慮を願いたい。
産業界の軽減税率に対する姿勢は複雑だ。食料品を税率8%に据え置くことで消費の維持は期待できるが、企業の事務も増える。国の財政再建と社会保障の持続可能性確立のための消費増税の効果を、後から設ける軽減制度で減殺することにも疑問が残る。
しかし将来、消費税10%超の追加増税を予想すれば、軽減税率もインボイスも導入やむなしという意見は根強い。容認に転じたとされる経団連は「反対という立場は変わらないが、政府が導入するというなら、合理的で企業負担の少ない制度にしてほしい」(幹部)と苦しい胸中を明かす。
今後、問題として浮上してくるのは税率そのものではなく、21年度に予定するインボイス導入に向けた中小企業の事務負担であろう。コンビニエンスストアやスーパーなど、商流と経理の電子化が進んだ大手企業はシステム改修で打撃を軽減できる。中小は、そうはいかない。
政府・与党は、税務上では中小企業に対して「簡易な制度」を設ける方針で、消費税の簡易課税に準じるものになりそうだ。例えば売上高を一定の比率で8%品目と10%品目に分け、概算で税額を計算するだけなら確かに事業者の事務負担は少ない。
他方、大手企業に製品を納入する中小企業にとってインボイス発行は新たな負担だ。簡易な制度の適用を受けた企業はインボイスが認められず、大手との取引関係に支障を来す危険もある。特に売上高1000万円以下の零細な消費税免税事業者の懸念が大きい。
過去の税制改正の経験からも、簡易な制度の詳細設計は税務当局に委ねられる。消費増税による事業環境の激変に加えてインボイスの負担が中小企業を苦しめることのないよう、配慮が必要だ。
(2015/12/11 05:00)
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