[ オピニオン ]

社説/COP21「パリ協定」(1)−自社事業への影響、長期的に検討を

(2015/12/15 05:00)

気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は日本時間13日未明に「パリ協定」を採択し、閉幕した。支援を求める途上国と先進国との緊迫した攻防が最後まで続いた。

薄氷を踏みながらもたどり着いた新協定は、京都議定書にかわる新たな国際枠組みだ。196カ国・地域の全加盟国が参加し、産業革命前に比べ気温上昇を2度Cよりも低く抑える目標を掲げた。1・5度C未満という努力目標も加えた。年1000億ドルを下限とする途上国への資金援助は、法的拘束力を持たない形で決着した。

国別の目標達成の義務化は見送ったものの、途上国と先進国が同じ枠組みに参加し、長期目標を共有したことは大きな成果だ。これを社会や経済構造を変える歴史的転換点にしたい。企業はパリ協定が動きだす2020年以降の変革を予想し、自社の事業への影響を検討しておくべきだろう。

パリ協定では、各国に温室効果ガス排出削減の国内対策の実施を義務づけている。世界中のどこの国で事業をする場合でも、この問題と向き合うことになる。

例えば中国は17年から排出量取引制度を全国規模に拡大する。2省5市で試行中だが、すでに世界最大の排出量取引市場を形成している。他の国でも今後、排出量取引や炭素税を導入するケースが増えるだろう。企業としては、事業展開する国・地域の政策を注視しなければならない。

また地域性だけでなく、今後のトレンドの変化も企業行動を左右する。パリ協定では目標の引き上げを前提に、5年ごとに進捗(しんちょく)を検証する制度を導入するとした。各国が将来、目標を上方修正する可能性を見込まなければならない。目先だけではなく、厳しい目標に備えた長期計画が必要だ。

ただ排出削減はエネルギー消費を抑え、コスト削減にもつながる。先手を打った企業ほど、自らの体質を強固にするだろう。

ここ数年、日本の温暖化対策は停滞していた。パリ協定をきっかけに再び取り組みを加速し、世界的に厳しさを増す温暖化対策に備えてもらいたい。

(2015/12/15 05:00)

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