[ オピニオン ]
(2015/12/10 05:00)
モノづくりの現場まで高度な情報ネットワークで結びつけ、グローバルに高効率・変種変量生産を目指す主導権争いが激しくなっている。米国や英国のモノのインターネット(IoT)や、ドイツの産業政策「インダストリー4・0(I4・0)」だけでなく、中国も製造業強化計画を策定した。日本は官民を挙げて技術革新に取り組まなければならない。
「新味はなく実現性も疑わしいが、標準規格を押さえられるのが心配」。産業技術総合研究所がI4・0について国内企業にヒアリングした結果、こんな不安が浮上したという。日本の工場はファクトリーオートメーション(FA)が進み、優れたFA機器・加工機メーカーも数多い。I4・0程度の自動生産ならば、とうに実現しているとの思いもあるだろう。
しかし流通や海外、協力会社も含めると、設計や小売りデータは工場とつながっていない。通信規格も企業ごとに異なる。つまり日本のFAは工場内で閉じている。
米国やドイツはI4・0の規格づくりで、早くもせめぎ合っている。英国もインフラや家電などで世界に先駆けるIoT研究に多額の資金を投じている。中国は製造強国を目指す「中国製造2025」や、I4・0でドイツとの連携を打ち出した。
もともと欧米は、統合業務パッケージやCAD/CAMなどで上流から製造の標準技術を握る。I4・0で通信規格も押さえ、上流から下流までのデータをネットでつないだ工場を新興国に展開しようとしている。高度にデータを分析・活用し、海外でも効率よく顧客志向の変種変量生産を図るのが狙いだ。この規格に外れた日本企業は閉め出されるおそれがある。
日本が巻き返すには、規格づくりに関与するだけでは不十分だろう。ロボットや人工知能、ビッグデータなど優位な分野で標準化の主導権をつかむ必要がある。かつては国が第五世代コンピューター構想を打ち出し、欧米勢を出し抜いた時代もあった。日本発の仕組みでリードする気概を失わず、得意とする高品質や技能に優れた技術を守り抜かなければならない。
(2015/12/10 05:00)
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