[ オピニオン ]
(2015/12/23 05:00)
2012年12月26日に発足した安倍晋三政権は、間もなく満3年を迎える。昨年の総選挙を制して第3次政権に移行してからだけでも、24日で満1年。短命に終わった第1次政権を加えると、首相としての在任日数は1500日間に迫り、来年4月には故・池田勇人氏を抜いて現行憲法下で第5位になる見通しだ。
安倍政権は、産業界が待望久しい長期安定政権である。民主党政権時代の3代の首相と、その前の短命内閣の連続に振り回された産業界は、安倍政権の安全保障面でのタカ派的側面を許容しつつ、支持を鮮明にしてきた。首相の経済政策「アベノミクス」による経済活性化や法人減税の実現も、産業界の希望に合致したものだ。
しかし、その支持に微妙な変化が起きていることを首相周辺は見逃すべきでない。アベノミクスが目指す「経済の好循環」の必要性を十分に理解しつつも、政府による企業の賃金や設備投資への介入に違和感を隠せない経営者が増えているのだ。
日本経済の”失われた20年“の間、多くの企業は貧弱な内部留保を蓄えると同時に、固定費を変動費化することで外部環境の激変にに耐える力をつけてきた。柔軟な雇用形態の導入や、アウトソースの活用が代表的な例である。
さらに近年では、収益力に直結するITの高度利用が企業の投資の大きな目的になっている。「従来型の賃金や設備投資の指標だけでみてほしくない」(大手メーカー首脳)という思いが、産業界の側にある。
経済の好循環が回り出せば、マクロ面でも賃金や設備投資の指標は上向くだろう。それを実現するのは政府による介入ではない。規制改革によって新たな市場が生まれれば、雇用増や実物投資を決断する企業は増える。首相が公約している「岩盤規制の打破」こそが、そのカギを握る。
日本経済の再生を成し遂げるには、消費税の軽減税率導入や携帯電話の通信費削減など以上に困難な構造改革が必要だ。4年目に入る安倍政権に、そうした挑戦を期待したい。
(2015/12/23 05:00)