[ オピニオン ]
(2015/12/24 05:00)
政府の総合科学技術・イノベーション会議がまとめた「第5期科学技術基本計画」の特徴は、指標や目標値を活用した点にある。これが研究現場への圧力になるようでは困るが、政府関係者が科技計画の進展状況を捉えるには有効だろう。官民対話で策定に参加した産業界は指標を念頭に置きつつ、産学連携による価値創出にこれまで以上に努めてもらいたい。
同計画は、懸案となっていた国全体の科学技術投資として「国内総生産の1・0%、総額26兆円」を明記した。同時に世界におけるトップ論文数や女性・若手研究者の採用などの目標値を掲げた。
同会議の原山優子議員はこの点について「(日本の科学技術が)よい方向に進んでいるのかどうかを把握し修正する上で、指標は“自らの鏡”になる。何を指標にするかも見直ししていく」と強調した。利用する指標の確立も第5期のテーマという考え方だ。
産学連携を意識した指標も多い。代表的なのは企業、大学、公的研究機関などセクター間の研究者移動だ。これを「全体で2割増」、特に「企業への他2セクターからの移動を倍増」とした。人材の融合によって新たな価値を生み出すのが目的だ。現状は企業から大学教員に転身するケースが目立つが、逆の流れが生み出せるかどうか興味深い。
また「大学や国立研究開発法人に対する企業の共同研究費」と「大学などの特許の実施許諾数」の目標は、それぞれ従来比で5割増だ。企業が積極的に大学にアプローチする米国などと異なり「日本は政策をみて民間が動く面がある」(原山議員)。近年、増えている企業と各省とのマッチングファンドや、内閣府が担当する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)での企業の実績を土台に、勢いを加速することが期待される。
新たな科技基本計画の策定にあたっては、同会議が経団連などと綿密にやりとりを繰り返した。企業も国の研究の主役のひとつだという意識を、産業界の各層に持ってもらいたい。
(2015/12/24 05:00)