[ オピニオン ]
(2016/1/5 05:00)
第190通常国会が4日、召集された。会期は6月1日までの150日間。例年なら1月後半の開幕だが、夏の参院選を控えて大幅な会期延長が困難なことから異例の早期召集となった。
今国会の焦点は、その参院選対策と野党が批判する2015年度補正予算案と16年度予算案・税制関連法案の行方だ。政府・与党は補正を月内、当初予算を年度内に成立させ、景気回復を確かなものとした上で5月末の伊勢志摩サミット、参院選へと突入するシナリオを描く。
一方、野党は年金受給者への3万円の臨時給付金や農家支援を盛り込んだ補正予算を、選挙対策の”バラマキ“として追求する構え。また消費税率10%時の軽減税率導入を含む税制関連法案についても、約1兆円の代替財源の確保を先送りした”見切り発車“や、対象となる食品の定義が消費者を混乱させる等として、与党を厳しくただす方針だ。
与野党の論戦は選挙を見据えた角逐に終始せず、財政のあり方を問い直す建設的な議論につなげたい。補正予算は新規国債を発行せず、当初予算も公債依存度を7年ぶりの低水準に抑えた。財政健全化に目配りした点は評価できる。問題は補正が期待する景気浮揚効果を実現できるか、さらに税収増を背景に当初予算の歳出抑制のタガが緩まなかったかどうかだ。
政府は約6000億円の公共事業や臨時給付金などを盛り込んだ補正予算により、16年度の実質成長率が0・4%程度押し上げられると見込む。ただ高齢者に的を絞った消費喚起の効果に懐疑的なエコノミストが少なくない。
また当初予算も、焦点の社会保障費で薬価を下げつつ診察料を上げるなど踏み込み不足の歳出抑制が散見される。軽減税率の対象品目をめぐる与党内協議も拙速の感は否めず、代替財源のあてがないまま予算案を国会に提出する。
国会の舌戦が、批判のための批判という空虚な議論に終始するようでは、国民も産業界も政治への関心を失う。日本の財政と経済に明るい展望を抱ける論戦が繰り広げられることを期待する。
(2016/1/5 05:00)