[ オピニオン ]
(2016/1/4 05:00)
2016年の日本経済は、景気が踊り場から緩やかな回復に転じたあと、17年4月の消費増税に向けて力強さを増し、わが国の潜在成長率とされる1・5%程度の成長を遂げることが期待される。実質賃金増加による個人消費の改善に加え、好調な企業収益に伴う設備投資の増加が見込まれるほか、輸出も堅調な米国景気に支えられ、増加が予想されるためだ。
個人消費を左右する所得情勢は経団連が今春闘でのベースアップを3年連続で容認することを決めたため、良好な状態が続きそう。前回の消費税引き上げ後、低調に推移している耐久消費財にも転機が訪れよう。リーマン・ショック後の景気刺激策で導入したエコポイント制度やエコカー補助金の要因が一段落したのに代わり、耐久消費財販売への追い風となる。
設備投資に関しては、中国経済の成長鈍化を背景に、15年は伸び悩む時期もあった。しかし米国景気が力強さを増してきたうえ、欧州景気も底打ち感が出てきており、輸出環境は改善が期待できる。これが設備投資を押し上げることになり、つれて鉱工業生産なども上向きに転じよう。
原油価格は世界的な需要減退やシェールオイルの増産を背景に、1バレル当たり40ドル程度に下落している。消費者物価指数が安定的に2%程度で推移することを目標とする政府と日銀には悩ましいが、原油安は製造や輸送のコストの低減に効果を発揮するため、企業と家計にとっては大きなメリットだ。
一方、リスク要因で最大のものは中国、新興国、資源国経済の下振れだろう。中国はストック調整が不可避であり、新興国は中国次第という面がある。また米国の利上げペースや幅によっては新興国、資源国経済への影響が大きいため、注視する必要があろう。
政府は雇用・所得環境の改善が企業収益を改善し、設備投資の増加につながり、雇用・所得を押し上げる好循環の実現を目指している。官民対話で賃上げや設備投資の積極化を呼びかけているのもその一環。産業界はそれに応えて、経済成長を後押しすることを新年に誓ってもらいたい。
(2016/1/4 05:00)