[ オピニオン ]

社説/CO2排出量ゼロ−難事を乗り越え、世界で優位に立とう

(2016/1/11 05:00)

産業界にとって、今年の最も大きな課題のひとつは地球温暖化への対応だ。昨年12月、気候変動枠組み条約第21回締約国会議は2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組みとなる「パリ協定」を採択。気温上昇を2度C未満に抑えること、1・5度Cを目標に努力することを明記した。

また温室効果ガス排出を今世紀後半には実質ゼロにすることも盛り込んだ。実質ゼロ下では森林などの吸収分以上に二酸化炭素(CO2)を排出できない。つまり石油や石炭など化石燃料の燃焼利用は難しくなる。石油、電力や自動車など産業界にとって大きな困難を伴うことになるだろう。

選択肢の一つは、発電時にCO2を排出しない原子力の利用だ。しかし福島事故が多くの近隣住民の生活を破壊し、その収束コストが10兆円を超えると予想されることをみても、エネルギー供給を原発に頼り切りにするわけにはいかない。

CO2排出実質ゼロ下の電力の主流は、再生可能エネルギーが担うしかないだろう。だが大半の再生エネはお天気まかせで、電力の主力としては不安定。このため電気を効率よく貯蔵する技術が必要になる。千代田化工建設などが風力発電を利用した水素の大量生産・貯蔵システムを開発し、燃料電池で発電する実証設備を建設するなど、産業界は水素活用に動きだした。

ほかにも水素をエネルギーキャリアにする研究が動いている。また藻類にアンモニアをつくらせる研究もある。自動車も将来は燃料電池車が主流になるとみられる。水素以外にも化石燃料や原発に頼らない選択肢はあり得るだろう。

産業界にとってCO2排出ゼロは困難だが、世界中の産業にとっても同じことである。ということは、CO2排出を伴わない安全なエネルギーを合理的な価格で実用化した企業が優位に立つということだ。厳しい排ガス規制をクリアして日本が自動車王国を築いたように、温室効果ガス排出ゼロは巨大なビジネスにつながると前向きにとらえて取り組むことが必要ではないだろうか。

(2016/1/11 05:00)

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