[ オピニオン ]
(2016/1/8 05:00)
外国人IT人材に活躍の場を提供する「アジア等IT人材定着支援協議会」が昨年、経済産業省の肝いりで発足した。留学生の受け入れ促進や日本企業への就職ルートの開拓などを通じ、日本への定着を支援するのが目的だ。背景には少子・高齢化に伴う労働人口の減少があるが、外国人を低賃金で活用しようという思惑では本末転倒。優秀なIT人材を呼び込むには、日本人からみても魅力ある活躍の場を築くことが必要だ。
協議会は「日本再興戦略」改訂版の施策の一環だ。同戦略では「2020年には情報通信業に従事する外国人IT人材を現状の3万人から6万人へ倍増する」という目標を掲げている。
まずは海外の大学と連携し、日本に興味のある学生を調査する。対象国はインドやベトナムを手始めに、インドネシアやミャンマーなどへも順次、拡大する。
すでに先進的な日系IT企業の中にはグローバル化を意識して、アジアをはじめ諸外国から優秀なIT人材を受けているケースがある。協議会を設けて公的な支援をしなくとも、民間企業に任せておけばいいと考える人もいるかもしれない。しかし実際には、海外人材の活用は簡単ではない。
そもそも日本のIT業界は大手を除けば下請け仕事が中心。「きつい、厳しい、帰れない」の”新3K職場“と評されて久しく、日本の若者からは敬遠されがちだ。そうした中での外国人活用は、オフショア(海外委託)開発と同様にコスト低減目的に陥りやすい。
今の状況でアジアのIT人材を薄給で雇って、果たして定着が進むだろうか。優秀な人材を呼び込むには、日本のIT産業の構造転換が必要だ。
協議会の事務局を務めるコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)幹部は「通常、ITといえば欧米しか見ないが、日本を見てもらうチャンスだ。重要なのはITの世界で日本のシンパをたくさん作ること。それが日本の国際戦略につながる」と語る。IT業界は人材不足の穴埋めのような取り組みではなく、真に魅力ある産業を目指す転機を迎えている。
(2016/1/8 05:00)
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