[ オピニオン ]
(2016/2/10 05:00)
中小企業の減少傾向が続いている。政府がこのほど公表した2014年7月時点の中小企業・小規模事業者数は、前回調査の12年から4万4000減の380万9000だった。景気の持ち直しもあり、09年から12年までの3年間で35万もの事業者が減少したのに比べれば減り方は鈍化した。しかし経営者にとって、依然として事業存続が容易でない現状が見て取れる。政府は意欲ある中小企業が将来展望を描ける環境整備に一層、力を注いでほしい。
中小の存続を後押しする施策のひとつが、経営者のバトンタッチ時に相続税や贈与税を猶予する「事業承継税制」だ。承継後の雇用維持などの要件が「厳しすぎる」との批判が絶えなかったが、15年1月にこれを大幅緩和したことが効果を上げている。経済産業省・中小企業庁の推計によると、09年の制度開始以降、年間170件程度と低迷していた利用件数は15年は350件に急増した。
だが、これで十分ではない。重い税負担に加えて円滑な承継を阻むもうひとつの理由が、取引相場のない中小企業の自社株式評価の問題である。
少子化に伴い、従業員承継など親族以外への承継の増加が見込まれている。相続を受けられない後継者の資力では、自社株式や事業用資産の買い取りは困難だ。内部留保の厚い優良企業ほど株式の評価が高くなり、後継社長への株式移転に頭を抱える。この問題で、力のある中小企業が行き詰まるようでは本末転倒だ。
こうした実情を踏まえ、中小企業庁は非上場株式の評価方法の見直し作業を進めている。経済政策「アベノミクス」によって上場企業の株価が上昇したことで、同業種の中小の株も高くなりがちだ。事業実態を反映した評価のあり方を財務当局と詰め、17年度の税制改正に盛り込む意向だ。
地方創生の検討が進む中で、地域経済の担い手と雇用の受け皿の大半が中小企業であることが再認識されている。中小企業が磨き上げてきた技術やノウハウを円滑に次代に伝承できるよう、政府は不断の見直しを進めてほしい。
(2016/2/10 05:00)
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