[ オピニオン ]
(2016/2/11 05:00)
日本経済が乱流に巻き込まれている。金融市場は長期金利のマイナスと円高・株安で混迷を深め、実体経済に打撃を与えている。景気失速の瀬戸際にあって、政府には非常の措置を含めた迅速な対応が求められる。
内閣府が週明けに発表する2015年10―12月期の実質国内総生産(GDP)は、再びマイナスに転落する恐れが大きい。そうなれば「緩やかな景気回復」とは言いがたくなる。企業も景気後退に備えて、自社の経営戦略を練り直す必要を迫られる。
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は「幸運」と呼べるプラス要因に恵まれ、効果を上げてきた。首相就任時に1万円強だった日経平均株価は早い段階で急騰し、投資家の信頼を得た。また世界的な原油価格の下落は円安による輸入物価の上昇を相殺し、企業業績回復の下支えとなった。
今年の年明け以降、潮目は明らかに変わった。株価は下げ足を速め、為替は円高に転換。原油価格の下落進行は産油国経済を圧迫する水準となり、世界経済の大きな不安要因になっている。
幸運を失ったアベノミクスは、実力を試される段階に入っている。金融市場でカネが行き先を見いだせない中で、日銀の「異次元緩和」にこれ以上、頼ることは難しい。成長戦略の実現は引き続き最も重要だが、より即効性のある対策が必要だろう。
といって、公共事業などで財政健全化をゆるがせにするのは得策ではない。例えば中小企業の最低賃金を引き上げ、同時に政府がその一部を支援するような方策なら消費拡大につながる。
他にも、高齢者の抱える金融資産を動かす方策をもっと打ち出せないか。ケア付き住宅を増やすために都市部の建ぺい率を緩和し、病院の併設を認めるなどの手法はいくつも考えられる。かつて”富裕層優遇“と批判されて実現しなかった無利子国債も、今なら「マイナス金利国債」として再検討する余地があるのではないか。
非常の措置には反対があって当然だが、時間的余裕は少ない。政府は知恵を絞ってもらいたい。
(2016/2/11 05:00)