[ オピニオン ]
(2016/3/15 05:00)
日銀がマイナス金利を導入して16日で1カ月が経過する。1月末の発表直後は一時的に円安・株高となったが、その後は円高・株安が進んだことから効果を疑問視する声もある。企業の設備投資や家計の消費支出を加速させ、経済の好循環をもたらす狙いも実現に至っておらず、金融機関の収益低下や貸し渋りといった副作用が心配されるのが現状だ。
今年に入ってからの為替市場は円高基調。これは中国経済の減速などによる世界経済の先行き不透明感から安全資産とされる円が買われているためだ。2月末に開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で政策協調が打ち出され、市場もやや落ち着きを取り戻した。このため日銀は、金利選好型の投資行動に戻ればマイナス金利が利いて円安になるとみている。
マイナス金利導入で変わったことは、長期金利が初めてマイナスを記録するなど短期から長期までの金利が低下したこと。このため黒田東彦総裁は「効果はすでに表れている」と胸を張る。しかし金利低下は当然の結果だろう。金融機関からの貸し出しが増加し、設備投資や住宅ローンに回って、経済が活性化して初めて「効果があった」というべきではないか。
日銀が発表した2月のマネーストック速報で、世の中に出回っている現金の月中平均残高は13年ぶりの高い伸びが明らかになった。現金残高は異次元緩和策の導入以来、増加しつつあるが、マイナス金利導入で預貯金金利が低下して「タンス預金」が増えた可能性は大きい。こうした資金の流れも経済にプラスとはいえない。
日銀は14、15日の両日の金融政策決定会合で、経済、物価の状況と合わせてマイナス金利の効果を点検している。このところ発表される経済指標は芳しくないため、早くも追加緩和を求める声がある。しかし、ここまではマイナス金利の影響が、世界経済の先行き不透明感に伴う市場の混乱など外的要因に打ち消される形となっており、追加緩和は時期尚早の感がある。まずは効果のほどをしっかり点検することが大事だ。
(2016/3/15 05:00)
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