[ オピニオン ]
(2016/3/16 05:00)
政府は16日に世界の経済・金融情勢を内外の有識者らと意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を開く。安倍晋三首相をはじめ関係閣僚、日銀総裁が出席し、伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)まで5回程度開催。サミット議長国として世界経済に適切に対応する施策を模索する。ただ最大の焦点は、安倍首相が会合後、2017年度の消費増税延期を決断するかどうかである。
個人消費はじめ景気回復力が鈍い日本が消費増税を延期すれば、内需主導の成長が促されて世界経済に貢献できるとの見方がある。ただ増税延期は、20年度までの財政健全化計画の前提条件が変わることを意味する。”景気条項“を封じてまで17年度の消費税率10%を約束した安倍政権が、自らこれを覆せば社会保障改革は足踏みし、将来世代に禍根を残すだろう。
増税延期の是非をめぐる判断基準もあいまいだ。首相はリーマン・ショックや大震災のような「重大な事態」が発生した場合は増税を延期するが、そうした事態に該当するかどうかの判定は政治責任で行うとしている。
年初来の金融市場の混乱で世界の株式時価総額は8兆ドル目減りした。これはリーマン・ショック直後に失った5兆ドルを上回る規模で、重大な事態とみなす有識者もいる。また16年1―3月期の実質国内総生産(GDP)が停滞し、夏の参院選や衆参同日選を見据えた政治的思惑が加われば、増税延期の可能性はさらに高まるとの声も市場から聞かれる。
一方、16年度後半は原油価格が上昇基調に転じ、世界経済は緩やかに回復するとみるアナリストらは増税延期に否定的だ。
安倍政権は東京五輪を開く2020年に、GDP600兆円の達成と基礎的財政収支黒字化という財政健全化計画の実現を目指している。消費増税を予定通り実施したとしても名目3%の高い成長率を継続するのが前提で、実現は至難の業である。政権が増税延期の是非を議論するなら、健全化と経済再生の両立を目指す”アベノミクス“を修正・再構築する覚悟が求められる。
(2016/3/16 05:00)