[ オピニオン ]

社説/CO2、2050年80%減−政府目標を技術革新に結びつけたい

(2016/3/17 05:00)

政府は温暖化対策の具体策である「地球温暖化対策計画」を了承した。2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量を13年度比で80%削減する長期目標を盛り込んだ。5月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)までに正式決定する。12年に一度は閣議決定しながら”中ぶらりん“状態になっていた「50年80%減」が改めて正式な目標となることを、環境技術の開発加速や投資増加に結びつけたい。

09年のサミットで、日本は「先進国は50年に80%以上削減する」目標に合意した。ただ、この内容を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案は10年に廃案。その後、閣議決定はしたものの東日本大震災後のエネルギーをめぐる混乱を考慮する文言が付け加えられた。

こうした経緯から「50年80%減」が日本の正式目標かどうかは微妙だった。「30年度排出量26%減」の中期目標を決める昨年の議論の中でも賛否が分かれ、「実現可能ではない目標を言うべきではない」などとする意見もあった。しかし年末のパリ協定で21世紀後半に排出の実質ゼロを目指す国際合意が成立したことで、日本としても改めて50年までの目標が必要となり、80%減が日の目をみた。

官民とも、長期目標があると今後、必要となる技術に目星をつけたり、研究・開発投資の戦略を立てたりしやすくなる。環境技術は革新的であるほど、コストと時間の壁が立ちふさがるからだ。

太陽電池は発明から半世紀を経たが、いまだに高コストが普及の障害となっている。航空機を軽量化して燃費を減らす炭素繊維でも、東レが米ボーイングから1兆円規模の受注をするまでやはり半世紀を要した。燃料電池車やバイオ燃料も、投資を取り戻すには相当な時間がかかるだろう。

企業にとって環境技術の開発は忍耐がいるし、撤退のリスクもつきまとう。「50年80%減」が明確になれば開発の動機づけとなり、腰を据えて研究・開発を続けられるようになるだろう。産業界には極めて高いハードルだが、これを技術革新や大型の環境投資のチャンスと受け止めたい。

(2016/3/17 05:00)

総合4のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

↓もっと見る

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン