[ オピニオン ]
(2016/3/31 05:00)
政府は国が発注する工事や物品購入などの公共調達で、女性の活躍を推進する企業を優遇するための指針を決めた。また4月には、企業などに女性登用の数値目標の設定と公表を義務づける女性活躍推進法が施行される。産業界には施策を先取りするような主体的行動を求めたい。
公共調達を利用した女性活躍企業の優遇は、試算によれば契約規模5兆円にのぼる。安倍晋三首相は「企業が働き方改革を進める新しいインセンティブ」と意義を強調している。また女性登用の数値目標も意味があるだろう。
労働力人口の減少に直面している日本にとって、女性の就労拡大が不可欠だとの認識が一般に広がったことを歓迎したい。福利厚生やCSR(企業の社会的責任)的観点を越え、収益・業績に直結する成長戦略としてとらえられるようになったのは大きな変化だ。
単に人手不足を補うためでなく、多様な経験や価値観を持つ人材が企業に創造力や競争力をもたらす効果が期待される。ただ残念なのは、こうした女性への期待が空回りしている現実である。
政権が女性の活躍推進の旗を振る一方で、多くの子育て世代は就労継続にほど遠い環境へのいら立ちを募らせている。それを象徴するのが、匿名ブログで注目を集めた待機児童問題だ。
都市部の自治体の多くは、以前から問題を認識しながら十分な取り組みができていない。国全体でも、働く意欲のある女性の願いを裏切ってきたと言わざるを得ない。与党内には補正予算による支援策を求める案が浮上しているが、今夏の参院選を意識した有権者アピールの印象が強い。
女性活躍を実効あるものにするためには、就労継続を阻む壁を取り除く地道な努力が官民それぞれに問われる。公的な保育サービス拡充はもとより、長時間労働の見直しや効率的な仕事の進め方を正当に評価する仕組みづくりなど、業界ごと、企業ごとの実情に合った工夫が必要だ。
法律や指針は、働き方の見直しの一里塚にすぎない。政府にも産業界にも不断の努力を求める。
(2016/3/31 05:00)