[ オピニオン ]
(2016/4/21 05:00)
三菱自動車が発表した軽自動車に関する燃費不正は、2000年代初頭に悪質なリコール隠しを引き起こした同社の法令順守(コンプライアンス)に関する体制が、いまだ十分に確立されていないことを明らかにした。三菱自はまず、原因究明と顧客対応に全力を尽くすことが必要だ。ただ、これが同社の経営に与える打撃は大きく、信頼回復は容易ではない。
20日の記者会見で相川哲郎社長は「一つ一つ石垣積み重ねるように(体質を)改善してきたが、全社員にコンプライアンス意識を徹底させることの難しさを感じている。無念であり、忸怩(じくじ)たる思い」と述べた。
不正の対象は、13年6月から生産している「eKワゴン」「eKスペース」と、それぞれの日産自動車に相手先ブランド供給(OEM)している「デイズ」「デイズルークス」の4車種、約62万5000台だ。三菱自と日産との軽自動車開発における協業の第1―2弾だった。
燃費計測にあたり、ベースとなる空気抵抗と転がり抵抗の値が小さくなるようにデータを修正していた。これにより5―10%、燃費値が改善するように見せかけていた。協業先の日産からの指摘で判明したという。
問題の車種の開発当時は、ガソリン1リットル当たり30キロメートルを超える車種が競合他社から立て続けに発売され、軽自動車が「第三のエコカー」ともてはやされて開発競争が激化していた時期である。担当者へのプレッシャーが相当に大きかったことは想像に難くない。しかし、それで不正が許されるはずもない。
独フォルクスワーゲンは、違法なソフトでディーゼル車の排出ガス制御を切り替える不正を働き、世界的な問題となった。内容は違うが、消費者の車両購入動機を左右する不正が日本勢から出てしまったことは残念でならない。
徹底した原因究明によって、こうした不正を組織として追放できなければ三菱自は生き残れない。リコール隠しで傷ついたブランド価値の回復は遅れ、同社を取り巻く環境は厳しさを増すことになるだろう。
(2016/4/21 05:00)
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