[ オピニオン ]
(2016/5/5 05:00)
クレジットカードの不正利用が増加している。背景にあるのは消費者向けの電子商取引(EC)サイトの増加だ。音楽やゲームなどのコンテンツ課金や電子マネーの購入は、ネット上だけで完結するために対策が難しい。関連企業は消費者に対し、利便性と隣り合わせの危険性を周知する必要がある。
日本クレジット協会によると2015年のカードの不正利用被害は120億円だった。かつては買い物時に磁気情報を不正に読み取る「スキミング」被害が主流。対策が進んだことにより2000年の308億円をピークに減っていたが、13年から再び増加に転じている。
不正利用で最も多いのは、番号や有効期限などの情報を盗まれることだ。近年ではサイバー攻撃による情報流出や、実在する大手インターネットモールのデザインを盗用した「なりすましサイト」に情報を登録してしまうなどの例がある。
また店舗での偽造カード利用以外の「その他不正利用」が増えていることも注目される。ECサイトではカード決済が一般的。中でも電子コンテンツや電子マネーなどは少額から利用が可能で、不正入手したカード番号が使えるかどうかを試されることもある。商品の配達が発生しない利用では不正利用者の発見も難しい。業界には、こうした被害はすでに数十億円に達するという見方がある。
ECサイト側の対抗策としては、独自のパスワードを使う2段階認証や購入時の電子メール確認などがある。ただ手続きが煩雑になることで売り上げの減少懸念がある一方、損害の多くをカード会社が負担するため対策を終えたサイトは限られる。専門店型ECサイトへの出店業者の被害をカバーする保証サービスもあるが、中小零細が多い出店業者は詐欺リスクと保険料負担をてんびんにかけ、二の足を踏みがちだという。
カードの不正利用の根絶は難しい。ただ企業と消費者それぞれが適切な知識を持つことで、かなりの部分を防止できる。関連企業は対策を急ぐとともに、消費者に注意を喚起すべきだ。
(2016/5/5 05:00)