[ オピニオン ]
(2016/5/9 05:00)
わが国の造船・重機業界を代表する三菱重工業が、複数の事業分野で厳しい局面に立たされている。同社が手がけるインフラや高度な機器事業は、日本の得意分野であると同時に将来の経済成長の柱だ。同社の直面する問題は、取引のない企業にとっても大きな関心事である。
三菱重工がきょう発表する2016年3月期決算には、累計2300億円超の損失計上に陥った客船事業が影を落とす。また持分法適用会社である三菱自動車の燃費表示不正問題は出口が見えず、三菱重工の業績に与える打撃が懸念される。
さらに米サザンカリフォルニアエジソン社のサンオノフレ原子力発電所で発生した三菱重工製蒸気発生器にからむ75億ドル超の巨額損害賠償請求など、顕在化しているリスクはほかにもある。防衛装備品輸出の目玉として期待された豪州の潜水艦調達で日本が敗退したことも、メーカーの一つである三菱重工にとってマイナスだ。
三菱重工は長く売上高3兆円前後の壁に阻まれてきた。ようやくフリーキャッシュフロー経営を定着させて財務体質を強化し、民間航空機や火力発電用ガスタービンなどを軸とした成長期に転換。17年度までの中期経営計画では「事業規模5兆円」を掲げている。
しかし新興国経済の減速や原油価格下落、中東情勢、円高など経営環境に不透明感が漂う中、各種のリスク対応で巨額損失を迫られることは計算外だった。事業化まで多額の資金を要する小型ジェット旅客機「MRJ」の開発など成長領域に影響を及ぼせば、再び低成長のトンネルに引き戻されかねない。
さらに三菱重工にとって最大のリスクは、業績悪化が経営陣の責任問題に発展し、変革の旗振り役が不在になることだ。グローバル化への挑戦から目を背けるようになってしまっては、同社ばかりでなく日本の産業界にとっても大きな損失となる。
三菱重工が目下の難局をどう乗り切るかは、日本のインフラ産業の国際化の成否の一つの試金石となる。打開のために知恵を集めてもらいたい。
(2016/5/9 05:00)
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