[ オピニオン ]
(2016/5/4 05:00)
日本の人口は2011年から減少に転じた。一方で”団塊の世代“が65歳に達し、高齢者は増え続けている。65歳以上が人口に占める割合(高齢化率)は13年に25%を超えた。高齢者人口は今後も増え続け、42年の3878万人、高齢化率33・4%をピークに減少に転じる見込みだが、その後も高齢化率は上昇を続けると推計されている。
人口減により国内消費は減少傾向になる。生産年齢人口減で労働力の確保も難しくなる。大企業は輸出で稼いだり、労働力の豊富な海外で生産して海外で売ったりすることも可能かもしれないが、中小企業にとって国内需要の減少は経営を難しくすることになるだろう。
だが、今後30年近く増え続ける高齢者層を市場としてとらえる道もあるのではないか。誰もが元気で長生きしたいが、体の機能が衰え医療や介護施設の世話になることが少なくない。そうした高齢者が生き生きと生活できる医療や介護、健康に役立つ機器いわゆるヘルスケア産業は成長産業だ。
介護や健康機器は利用者の状態に応じてつくることもあって量産に向かない。地域に根差した中小のきめ細かいモノづくり力が生きる分野といえる。すでに移乗・移動ロボットや見守りロボット、移乗しやすい車いす、折り畳み式リフトなどの中小企業の開発事例が出てきた。
「超高齢化社会の課題解決に向けた機械情報産業の新展開」を3年間研究した北嶋守機械振興協会経済研究所次長は「ヘルスケア機器の開発に助成金を出す自治体もでてきたが、助成金で試作品をつくったら終わりというケースが多い。”施策の墓場“にならないよう出口を見据えた関係機関との連携や自治体の支援が必要」と強調する。
ヘルスケア機器の最初の実践の場は地域社会である。したがって地域の医師や看護師、介護施設、サービス業、福祉関係の研究者などとクラスターをつくり、地域密着型の産業として育てることが大切だ。地域に根差した中小企業ならではのヘルスケア機器が全国に、そして世界に広がることを期待したい。
(2016/5/4 05:00)