[ オピニオン ]
(2016/5/16 05:00)
三菱自動車が日産自動車の出資を受け入れることになった。燃費不正による経営とブランド価値への悪影響がどこまで広がるか見渡せない中で、三菱自の経営陣の要請に日産のトップが答えた形。素早い決断と言えるが、おそらく三菱自にとって他の選択肢はなかった。
今後、三菱自は日産から経営陣を受け入れて再建に取り組む。だが「閉鎖的」で「新しいことに挑戦しない」と益子修会長みずから語る三菱自の社風の改革は容易ではない。
三菱自と日産の関係が深まったのは2010年。軽自動車の共同開発などに合意したことがきっかけだ。
当時から、規模に劣る三菱自が日産の資本を受け入れるという見方があったものの、紆余(うよ)曲折が続いた。タイでのピックアップトラックの生産・開発協力や、韓国のルノー子会社製の車を三菱自が北米で売ることなど、両社の利害が一致せずに流れてしまった話も多い。今後は日産が主導権を握り、こうした協力が進むとみられる。
三菱自の再建のカギは二つある。第一に開発陣の風土改革をやり遂げられるかどうか。三菱自の社員はプロパーだけでなく、三菱重工業はじめ三菱グループの有力企業の出身者が加わり、一枚岩ではない独特な組織力学が働いているといわれる。ここに日産出身者が加わって組織がバラバラになるようなら再生の道は遠くなるばかりだ。
第二は企業統治体制。日産が三菱自に送り込む会長人事が焦点だ。カルロス・ゴーン氏が日産とルノーに加えて三菱自のトップまで兼務するのは、さすがに無理がある。
ルノー・日産連合に三菱自が加われば15年の世界販売台数は900万台を突破し、3位の米ゼネラル・モーターズに迫る。1000万台の大台への挑戦はトヨタも独フォルクスワーゲンも苦しんだ。
新たに生まれるルノー・日産・三菱自連合が“ゴーン頼み”ではない新しい企業統治のあり方を確立できなければ、内部崩壊にいたる危うさをはらむといわざるを得ない。
(2016/5/16 05:00)
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