[ オピニオン ]
(2016/6/9 05:00)
海洋に漂うマイクロプラスチックが問題視されている。容易に分解されないため、水に混じって流出すると回収が難しい。すでに生態系への影響は無視できない段階だが、対策は進んでいない。使用規制や、製造段階から分解性物質に置き換えるなどの工夫が求められる。
マイクロプラスチックは直径5ミリメートル以下のプラスチックゴミで、世界的な消費の増大につれて海洋への流出が増えている。2015年の主要7カ国(G7)首脳会議「エルマウサミット」で、この問題を取り上げた。今年5月に富山市で開いたG7環境相会議でもマイクロプラスチックが大きな脅威となっていることを表明した。
流出している形状はさまざまだ。洗顔料、化粧品、工業用研磨材などに使うビーズ状のものや、プラスチック製品の原料であるペレット、製品が砕けて細片状になったものなどがある。中でも対策が急がれるのが、ポリエチレンやポリプロピレンの直径0・1ミリメートル以下の微細粒であるスクラブ剤。肌の汚れや古い角質を除去する目的で、洗顔料や歯磨き剤、洗浄剤などに添加されている。
ポリエチレンは比重が軽く、水に浮く。洗顔料などを洗い落とした生活排水から川や海に流れ込む。粒径が小さいため排水処理施設での除去も難しい。表面にポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害物質を吸着しやすく、魚や鳥の体内で濃縮されている懸念が指摘される。
汚染は既に世界の海に広がっている。遅きに失した感は否めないが、新たな流入を止めない限り問題は広がる一方だ。欧米では使用を規制する例も出始めているが、日本はまだ満足な議論すらない。
一部の洗浄剤メーカーは、使用後すぐに水に溶けるスクラブ剤を開発したり、天然由来の成分に切り替えたりする方針を打ち出している。コストの問題などから直ちに全量を切り替えることは難しいだろうが、一刻も早く排出をゼロに近づけなければ他の環境問題と同様、地球の未来に大きな禍根を残すことになる。
(2016/6/9 05:00)