[ オピニオン ]

社説/新卒採用選考の解禁−まずは新ルールを定着させよう

(2016/6/10 05:00)

2017年春に卒業予定の大学生らを対象とした企業の採用選考が、6月から解禁された。経団連が昨年、選考開始を8月に遅らせたことで就職戦線は大混乱した。その反省を経て2年連続の指針変更となった今年はルールを徹底し、制度を安定させることが望ましい。

昨年の混乱の発端は、就職活動の早期化が学業を妨げているという政府の指摘を受けて、経団連が選考活動開始時期を4月から8月へ繰り下げたことだった。しかし就職活動期間が長くなりすぎて企業も学生も疑心暗鬼となり、解禁前に内定を出すケースが続出した。

経団連は今年、会社説明会の解禁を3月に据え置く一方、面接などの採用選考解禁を8月から6月に前倒しすることで事態の沈静化を図ろうとしている。これにより今年の就職戦線は、説明会から面接までの期間が短い「短期決戦」の様相を呈することになった。この指針改定が、どんな影響を及ぼすかは慎重に見極めなければならない。

現時点で経団連の榊原定征会長は「学生にとってマイナスにはなっていない」との見方を示した。だが解禁破りは依然として少なくない。

本来なら大手企業の多くは、6月中に採用内定を通知する。しかし就職情報会社ディスコによると、6月1日時点の内定状況は54・9%。つまり半数以上の学生が実質的に内定を得ており、解禁日が有名無実化していることになる。人手不足感の強い企業の採用意欲は高く、学生優位の売り手市場であることも、企業の動きを早めている。

改善点や課題は、引き続き細かく検証する必要がある。しかし就職をめぐるルールを3年連続で変更することは企業と学生の双方にとって不幸である。まずは新ルールの周知と徹底で、混乱の収束を急ぐべきだ。

経団連は今年の指針改定で、学生の学業への負担を考慮して土日や祝日、夕方以降にも面接をすることを企業に求めている。こうした細かな配慮が実際の採用活動に反映されたかどうかも注視した上で、採用方式の是非を論じる必要がある。

(2016/6/10 05:00)

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