[ オピニオン ]
(2016/6/16 05:00)
「知事は地元では、大統領と首相を合わせたより偉いんですよね」―。旧知の政府高官は自治体への出向の経験を振り返りつつ、そう話す。確かに自治体は国に比べて、首長に権力が集中している面がある。
東京都の舛添要一知事が辞職願を提出した。公金の私的流用疑惑を問われ、与党にも見放されて定例議会を乗り切れなかった。知事の権力の大きさに、どこか自制が緩んでいた。
個々の疑惑には少額のものもあり、公用車利用など警備まで考えれば必要な費用もあったろう。しかし第三者による精査を前面にした知事の説明は有権者の理解を得るにはほど遠く、民主主義の根幹となる“負託に足る信頼”を失った。辞職は当然だ。
次の知事の選挙は7月10日投開票の参院選から間もない8月とみられる。都民にとって迷惑な話。知事不在の間、中堅国の経済規模にも匹敵する東京都の行政は停滞する。産業界に打撃が及ばないよう願いたい。
仮に後任の知事が任期満了まで努めると、4年後に来る知事選は2020年の東京五輪・パラリンピックの会期中になりかねない。招致都市としてだけでなく、主催国としても恥ずかしい事態である。こうした面でも、迷走を続けた舛添氏の責任は重い。
(2016/6/16 05:00)