[ オピニオン ]
(2016/6/23 05:00)
欧州連合(EU)からの英国の離脱を問う国民投票がきょう実施される。結果がどうあれ、日本勢はじめ英国進出企業が困難にさらされないような配慮を願う。それとは別に歴史的な視点から、日本が今回の英国の問題に学ばなければならないことがあるように思える。
近代以降の欧州史は、英国・フランス・ドイツの3強を軸に綴(つづ)られる。戦乱と対立を克服してEUが誕生したが、その主導権を握ったのは仏独の大陸連合だった。これは多くの政治学者の一致した分析だ。
3強から疎外された英国にとって、EUとの関係を見直すことは目先の移民への嫌悪や偏狭なナショナリズムではない。国のあり方の根幹に関わる問題だと考えなければならない。
未来のアジアにおける日本の立場との類似を、同じ島国の英国に見いだすことができよう。検討が進む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)構想は日本にとって大いなる期待だが、将来にわたり主導権を日本が握れるかどうか分からない。経済力で日本を超えた中国は、EUにおける仏独連合の地位を目指すと思われるからだ。
英国のマーガレット・サッチャー元首相はかつて、自国のEU離脱と北米自由貿易協定(NAFTA)加盟を主張した。とっぴに聞こえるが、地理的制約を超越して選択肢を広げようという政治的センスには刮目(かつもく)すべきものがある。米国という“同文同祖”の存在は、英国の最強の切り札である。
こうして考えれば、未来の日本の外交カードは間違いなく環太平洋連携協定(TPP)である。アジアの一員であるだけでは埋没しかねないが、TPPを早期に発足させ、アジア太平洋地域全体の発展を目指すことが日本のリーダーシップにつながる。地政学的に大陸との主導権争いで不利になりがちな島国には、相応の知恵が必要だ。
むろん未来は予見しがたく、アジアと欧州では異なる要素も多い。しかし国のあり方を大きな流れで把握することが長期的利益を生む。それが日本が“外交下手”を脱する第一歩だ。
(2016/6/23 05:00)
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