[ オピニオン ]
(2016/7/21 05:00)
「ジンガ」は「ふらふら歩く/力を抜く」という意味のポルトガル語。ブラジルの伝統武術「カポエラ」から生まれた言葉とされ、特にサッカーでは、しなやかで相手を惑わす動きを表現する。サッカー王国ブラジルの選手が織りなす創造性溢(あふ)れるプレーの源だ。
そのブラジル代表チームが苦境に陥っている。6月の南米選手権では29年ぶりにグループステージで敗退し、ドゥンガ監督が解任に追い込まれた。現地メディアは「選手たちはジンガを失った」とチームを批判する。
8月5日にリオデジャネイロで開幕するオリンピックで汚名を返上したいところ。“サッカーの王様”ペレが「今の代表選手で唯一ジンガを持つ」と評するネイマール選手が五輪に限って出場することもあり、開催国として金メダルへの国民の期待は大きい。
ただ同国ではルセフ大統領が停職となり、5月に暫定政権が発足したものの閣僚が相次ぎ辞任している。政局の混乱は収まる気配がなく、経済低迷も深刻化しているだけにお祭りムードは今ひとつ。
現地経済人からは「(暫定政権後の)次の時代を引っ張るリーダーが誰か見えてこない」と嘆きの声が聞かれる。政治・経済の混迷打破には「ジンガ」のリズムは不要だ。
(2016/7/21 05:00)