[ オピニオン ]
(2016/8/3 05:00)
政府は2日、事業規模で28兆円を超す大型経済対策を決めた。将来をにらんだ働き方改革やインフラ投資、低所得者への現金給付など可能な限りの政策手段を動員した。足元の景気指標の悪化が目立ち、デフレ脱却も見通せないなど経済運営は厳しさを増している。政府はこの対策を遅滞なく実行することで、今度こそ経済再生の実を上げてもらいたい。
経済対策に先立って内閣府が公表した「2016年度経済財政報告」は、経済政策「アベノミクス」によって経済再生、デフレ脱却に向けた進捗(しんちょく)がみられるものの、消費や設備投資の拡大には及んでおらず、力強さを取り戻すことが課題だと指摘。そのためには需給両面の強化が必要だと分析した。
それによると個人消費の伸び悩みは「所得の改善を支出の拡大につなげる循環に目詰まりがある」(内閣府幹部)ことに問題がある。特に非正規雇用者の比率が高く、将来不安を抱える若年子育て世帯と、勤労所得がなく安定収入の少ない60代前半の無職世帯で節約志向が強い。これを解決するためには正社員との格差是正や定年延長、高齢者就労マッチング支援の強化などが重要とした。
また企業収益が過去最高水準にありながらも設備投資に力強さが欠けていることを指摘。設備投資以外の買収・合併、研究開発、海外投資に積極的な企業の収益力が高いというデータを示しつつ「そうした投資により、生産性、収益性を高めて成長力の向上につなげることが期待される」(同)としている。
政府の新たな経済対策は、この経財報告の分析を下敷きにしている。従来のアベノミクスは財政出動で時間を稼ぎ、経済環境を整えることで個人の節約志向や企業の投資マインドの改善を狙ったが、結果的に十分な成果を上げられなかった。
多くの政策を盛り込んだ新たな経済対策は、アベノミクスの“やり直し”といえる。予算措置だけでなく岩盤規制の改革にも真剣に取り組み、首相の目標とする「日本再興」を実現してもらいたい。
(2016/8/3 05:00)
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