[ オピニオン ]
(2016/8/3 05:00)
安全保障関連法の施行後、初めてとなる2016年版の防衛白書が2日に閣議報告された。弾道ミサイル実験など北朝鮮の挑発行動を「差し迫った脅威」と深刻に受け止めている。
昨年10月に防衛装備庁が発足してから初の白書でもある。先進技術実証機の意義やC―2輸送機のプロジェクト管理による低価格化を誇らしげに分析する一方、豪州への潜水艦輸出という超大型商談の失敗については淡々と事実関係を記すにとどめた。
周辺国からの圧力が強まる中で、不測の事態が発生しないように日夜、監視と警戒を怠らない最前線の自衛官には頭が下がる。それでも違和感を覚えるのは、当事者が“脅威”を語ることだ。
防衛省は政府予算の要求官庁でもあり、白書は要求圧力の意味を持つ。財務省を説得するのは大変だろう。ただ防衛費がマイナスの時代はともかく、増加に転じた現在では過剰な予算の歯止めが外部から見えにくい。
白書は装備品開発費の圧縮を事例ベースで紹介している。本当は、全体費用をどれだけ減らせたかが知りたい。加えて輸出や国際共同開発を成功させ、予算を節約してもらいたい。その余剰分を「新規装備に向けます」と誇ってこそ日本らしい戦略であり、防衛白書だ。
(2016/8/3 05:00)