[ オピニオン ]
(2016/8/10 05:00)
150年前、英国議会で通称「赤旗法」が制定された。自動車がようやく世に出た時代。道路を通る時には、人や動物に警告するために赤旗を持った歩行者が先導するというルールだった。
『自動車の世界史』(グランプリ出版)によると、蒸気機関で走る当時の自動車は道路検査官や馬車所有者から道路を傷め、馬を脅かす存在として敵視されていた。安全を守るという主張のもと、自動車の最高速度は市内で時速3キロメートル、郊外で同6キロメートルに制限された。
これは、それまで世界をリードしていた英国の蒸気機関産業に壊滅的な結果をもたらした。30年後の1896年に廃止したが遅すぎたという。自動車産業の主導権はドイツや米国に移っていた。誤った規制が産業の衰退を招く証左である。
現代の交通社会では、自動運転が脚光を浴びている。同時に自動運転中の事故で、運転者がどう責任を負うのかも焦点だ。「ジュネーブ条約」では運転者が責任を持って運転することを定めている。一方で国連の機関では、運転者の責任のあり方を見直す検討が始まっている。
新技術が生まれても、そのままでは社会に受容されない。安全はもちろん最重要だが、新産業の育成にもかなうルール作りを期待したい。
(2016/8/10 05:00)