[ 地域経済 ]
(2016/8/15 05:00)
北海道の強みである「食と観光」。悲願だった北海道新幹線が開業し、利用者数は今もなお堅調に伸びている。外国人観光客も増加し北海道の観光産業は好調さが続く。道産食品の情報発信強化に向けた連携や富裕層の観光客を取り込む企業の動きなども活発だ。(札幌・山岸渉)
【昨年190万人超】
日銀札幌支店が7月に発表した金融経済概況によると、北海道地域の景気は「緩やかに回復している」とする中、観光は好調さを増していると判断した。特に顕著なのが外国人観光客の増加だ。2015年の外国人観光客数は前年比38・7%増の190万2900人で過去最高となった。円安効果や雄大な自然など観光地としての魅力の浸透が数字を押し上げている。
観光の振興を後押しする存在として影響力を増しているのが北海道新幹線だ。4月の利用者数は1日約5600人だったが、5月に約7600人、6月は約7900人と伸び続け、夏場にかけて開業効果が高まってる。日本政策投資銀行は北海道内への経済波及効果は年間約136億円と試算している。
「人のにぎやかさは以前と全く異なる」。函館市内の変化についてこう語るのは、ITサービスを手がけるエスイーシー(北海道函館市)の小野雅晴監査役。函館市内の主要な観光名所が15年に同社のシステムを拡張するなど開業効果を見越した動きもあった。エスイーシーでは仕事の折でも、東京出張は飛行機を使うより滞在を長くできることから、新幹線で移動することが多いという。
【富裕層に照準】
富裕層の観光客を狙った取り組みも進む。クールスター(札幌市中央区)は高級リムジンバスでの送迎とともに、国内外の富裕層向けにオーダーメードでの旅行プランを提供する。今後、バスの台数やアテンダント数を増やすなど体制を強化する。レストランなどを運営する美瑛ファーマーズマーケット(北海道美瑛町)とも連携し、北海道の魅力をより生かした旅行プランを打ち出していく。
美瑛ファーマーズマーケットは富裕層向けオーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)の新設などを計画しており、18年度をめどに美瑛町を巡る旅行プランに組み合わせるなど、地元の魅力を発信していく。
海外富裕層向け旅行会社のプレミアム北海道(札幌市中央区)は、ノウハウを生かし、北海道の食と観光に関連する企業を対象としたコンサルティングや道産品の輸出にも取り組む。北洋銀行の「北洋イノベーションファンド」と北海道銀行や道内21の信金・信組などで構成する「ほっかいどう地方創生ファンド」から出資も受け、本格的に事業を展開する意向だ。
地域活性化に向けて「笑い」と連携―。北海道は3月に吉本興業(大阪市中央区)と包括連携協定を結んだ。同社の所属タレントがイベントなどで北海道の食や観光情報を国内外に発信するなど、北海道ブランドのPR強化を進めている。
【吉本とコラボ】
今月6―8日には「みんわらウィーク」としてお笑いイベントを札幌市内で開催。主婦目線で選んだ地方の特産品を発掘する「よしもと47シュフラン」の北海道版「よしもと北海道シュフラン」では道内の主婦が推薦した商品を集め、試食選考会も実施した。道産食品の全国的な訴求につなげたい考えだ。
吉本は米アマゾン・ドット・コムと連携し、地方活性化に向けた新プロジェクトも始める。今秋からアマゾンの定額制映像配信サービス「プライム・ビデオ」を活用し、よしもと47シュフランの認定商品などを中心に地域の名産品を紹介する番組を配信。視聴者は番組を見ながら、登場する商品を買うことも可能となる。
番組の第1弾では、吉本所属で北海道出身のタレント「タカアンドトシ」が、道産食材を使いゲストとともに料理をつくるなど北海道の魅力を発信していく。
プロジェクトについて北海道経済部経済企画局の堀泰雄局長は「(タカアンドトシは北海道観光大使であり)北海道のおいしいものを紹介してもらえるのではないか。映像もあるので観光振興にもつながる」と新たな取り組みに大きな期待を寄せる。
(2016/8/15 05:00)