[ オピニオン ]
(2016/8/17 05:00)
企業の海外調達網に厳しい目が向けられている。原材料の購入先が自然破壊をしていたり、下請け企業が従業員を劣悪な現場で働かせていたりすると、取引関係があるだけで社会から批判されかねない。新たなリスクとして考える必要がある。
トヨタ自動車は7月に、世界自然保護基金(WWF)と環境保全を推進する協力関係を結んだ。WWFは、生態系を守って栽培された天然ゴムを認める基準を新たに策定する。トヨタは、この基準を満たした天然ゴムを調達するようにタイヤメーカーに呼びかける。
直接には発展途上国の自然保護が目的だ。同時にトヨタはレピテーション(評判)リスクを警戒している。東南アジアの途上国では、経済発展を急ぐあまり自然林を無理やり切り開いたゴム農園が増えているという。動物はすみかを奪われ、生物の多様性が失われる。また原住民が追い出され、人権問題にもなっている。
こうした農園の天然ゴムで作ったタイヤを購入すると、トヨタが自然破壊や人権侵害に加担したとみられかねない。実際に海外では2015年に、不適切な管理方法で火災を起こした森林の樹木を原料とした紙製品が、現地のスーパーマーケットから締め出された例がある。
また13年にバングラデシュで起きたビル倒壊事故では、入居していた縫製工場で過酷な労働を強いられていた1000人以上の労働者が亡くなった。この時には、縫製工場に安価な発注をしていた欧米の大手アパレル業者が非難を浴びた。
英国では劣悪な労働環境への懸念から、15年に「現代奴隷法」を施行した。調達先に児童労働や強制労働、人身売買がないかを確認し、教育することを取引する企業に求めている。日本企業の英国子会社も対象だ。
サプライチェーンが海外に広がる中で、企業単独ではこうした海外の取引相手の実態把握にも限界がある。他社とも協力する必要があろう。日本の産業界を挙げて、途上国の企業に環境や人権問題の教育をしても良いのではないだろうか。
(2016/8/17 05:00)
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