[ 政治・経済 ]
(2016/9/5 05:00)
(ブルームバーグ)中国・杭州で4日に開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議では、世界的な鉄鋼の供給過剰問題が激しい議論の対象となっているもようだ。
中国は鉄鋼の過剰設備をめぐり批判にさらされており、この問題は今年の7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で取り上げられた。G20首脳宣言もこれに触れる見通しで、先進各国がこの問題を引き続き重視していることを示す。
首脳宣言草案は「われわれは一部産業での過剰生産能力を含む構造問題が世界経済の回復の弱さや低迷した市場の需要によって悪化し、貿易や労働者にマイナスの影響を引き起こしていると認識している」とした上で、「鉄鋼や他の産業の過剰生産能力が集団での対応を必要とする世界的な問題だと認識する」とした。
ブルームバーグが草案のコピーを閲覧した。議論が非公開だとして当局者2人が匿名で語ったところによると、首脳宣言の文言は最終的なものでなく、公表までに修正される可能性がある。
「需要の問題」と中国は主張
中国は鉄鋼問題について、供給ではなく需要の問題だと主張してきた。 朱光耀財政次官は2日の杭州での記者会見で、過剰能力の削減は世界規模の行動を要すると指摘。この問題では非難を控えて協調を強化する方が世界経済にとって有益だと述べ、中国は主要国の中で過剰能力削減に向けた行動をいち早く起こした国だと 説明した。
首脳宣言草案は、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバルフォーラムを経済協力開発機構(OECD)の支援で創設することを呼び掛けており、「グローバルフォーラムの取り組みに関する進捗(しんちょく)報告が2017年にG20担当閣僚に行われることを期待する」としている。
オバマ米大統領と中国の 習近平国家主席は3日、鉄鋼やアルミ部門を含む「工業の過剰生産能力に対応する」上での中国の役割について議論した。ホワイトハウスが米中首脳会談後に 声明を発表した。
欧州委員会の ユンケル委員長はG20会議の際に記者団に対し、「鉄鋼セクターの過剰生産能力は世界的な問題だが、中国が絡む具体的な側面がある。われわれはこれに対処する必要があり、この数カ月間、取り組んできた」と発言。鉄鋼問題に真剣に取り組むことが急務だとの認識を示した。
為替は従来のコミットメントを再確認
首脳宣言草案は、金融市場のボラティリティが成長の下振れリスクとなっていると指摘。景気てこ入れのための手段を総動員するよう各国・地域に呼び掛けている。また、金融政策だけでは均衡の取れた成長を促進できないと指摘し、財政措置を増やす必要性を容認する内容となっている。
草案はさらに、「われわれは競争的な通貨切り下げを控え、競争上の目的で為替レートをターゲットとしないことを含め、為替レートに関する従来のコミットメントを再確認する」としている。
英国の欧州連合(EU)離脱が選択された国民投票結果については、世界経済の不確実性を高める要因となっていると言及しながらも、「国民投票の結果がもたらし得る経済・金融面の影響について、G20加盟国は前向きに対処する体制が整っている」と指摘。「将来、英国がEUの緊密なパートナーとなっていることを期待する」とした。
原題: Global Steel Glut Concerns Raised in G-20 Draft Statement (3)(抜粋)
(2016/9/5 05:00)