[ オピニオン ]
(2016/9/22 05:00)
情報機器の最先端では、分類不能のハードウエアが相次いで登場してくる。最近、よく聞くのが「アンドロイドTV端末」。画面も電話機能もない据え置き型のスマートフォンといえば、誤解されるだろうか。
イメージしやすいように説明すれば、たばこ2箱分くらいの大きさ。HDMIでテレビに、USBかブルートゥースででマウスとキーボードに、有線か無線のLANでネットに接続する。メーカーによって機能は異なるが、ブラウザでホームページや動画サイトを閲覧したり、HDDに貯めた音楽や動画を再生するのがメーン。大画面テレビでハイビジョン動画を見られる性能を持つ半面、3次元のゲームや表計算、画像編集などには耐えない。
OSやCPUはアンドロイド・スマホと同じで、スマホのアプリをダウンロードして使う。省電力だし起動も速い。価格は数千円程度からあり、パソコンの数分の1以下だろう。リビングに集まって皆で旅先で撮影したビデオを見たり、寝室のテレビで寝る前に電子書籍を読むなどの手軽な使い方が可能だ。
少し前まで「ネットワーク・メディア・プレーヤー」と呼ばれる機器があった。USBやLANを経由して、ホームサーバに蓄積した音楽や静止画・動画をテレビに映し出す装置だ。「TV端末」はこの機能を強化し、ホームページ閲覧や動画サイトの視聴にも使える機能を盛り込んだ。仕事で使うには物足りない部分もあるが、家庭での息抜きには十分といえる。
実際に使ってみると、ホームページ閲覧程度なら極めて快適。マイクロソフトの「ワード」などのアプリを使えば、今でもテキスト文書作成ぐらいは楽勝だ。機能限定ながら、パソコンの領域にスマホが進出してきたと見ることも可能だ。
著作権などの問題もありそうだが、いずれ大きな市場に発展する可能性を秘める。しかし残念なことに「ネットワーク・メディア・プレーヤー」も「アンドロイドTV端末」も、日本メーカーの製品はごくわずか。大半は中国製の輸入品だ。それなりに普及した時に日本勢は主役になれないだろう。かつて「ウォークマン」のような機能限定で既存の常識を打ち破る製品を世に出した日本の電機メーカーが、興味深い新たな製品を送り出す力を失っている。その現実を、目の当たりにしている思いがする。
(論説副委員長 加藤正史)
(2016/9/22 05:00)